2016 Fiscal Year Research-status Report
HTLV-1キャリア高危険群への積極的介入に向けた進行阻止・発症予防法の開発
Project/Area Number |
15K08439
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
大隈 和 国立感染症研究所, 血液・安全性研究部, 室長 (80315085)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | HTLV-1感染 / 疾患発症予防 / 感染細胞 / 標的化 / TSLC1 / CRTAM / 緑膿菌エクソトキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、本研究では、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)関連疾患発症のリスク因子の一つであるプロウイルス量を、感染細胞を標的化して排除することで減少させる薬剤候補の開発を進めた。 本年度我々は、HTLV-1感染細胞の表面マーカーであるヒトTSLC1 (Tumor suppressor in lung cancer 1)を分子標的とした組換えタンパク質、即ちTSLC1のリガンドであるヒトCRTAM (Class I-restricted T cell-associated molecule)を、CD91との結合部位を欠失させた緑膿菌エクソトキシンA (PE38)に連結させた融合タンパク質(CRTAM-PE38)を産生した。この薬剤候補は、特異的なCRTAM-TSLC1分子間相互作用により選択的にHTLV-1感染細胞に結合した後、細胞内に取り込まれ、PE38の作用により標的細胞を殺傷すると考えられた。その有効性を検討するために、まず種々の細胞株においてTSLC1の細胞表面における発現をフローサイトメトリーで調べた。予想通りTSLC1はHTLV-1関連細胞で発現が認められ、非関連細胞では発現が認められなかった。そこで、これらの細胞株にCRTAM-PE38を投与したところ、in vitroにおいてHTLV-1関連細胞を殺傷したが、非関連細胞は殺傷しなかった。また、HTLV-1関連細胞株における殺細胞効果は、濃度依存的であったが、TSLC1の発現レベルとは無関係に細胞の効果に対する感受性に違いが認められた。 以上から、CRTAM-PE38は昨年度本研究で開発した薬剤候補TARC-PE38より有効性が低い可能性があると考えられた。また、siRNA等を効率良く運搬可能な、TARCにオリゴヌクレオチド結合領域を融合させた新規薬剤候補を創出したので、その検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、薬剤候補として、HTLV-1感染細胞の表面マーカーであるTSLC1を標的とした組換えタンパク質CRTAM-PE38を産生し、HTLV-1関連細胞株や非関連細胞株に対するin vitroでの治療効果を検証した。ここまで2種類の薬剤候補(CRTAM-PE38, TARC-PE38)について、in vitroにおける有効性を検討でき、TARC-PE38についてはin vivoでの検討まで進めることができているので、本研究は現時点ではおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、薬剤候補CRTAM-PE38について、in vitroにおける効果をさらに検証し、有効性を見極める。その上で、HTLV-1感染ヒト化マウスを用いたin vivoでの検討まで進めるかどうか判断する。また、HTLV-1感染細胞の別の表面マーカーであるCCR4を標的とするCCL17/TARCにオリゴヌクレオチド結合領域を融合させた新規組換えタンパク質について検討を進める。この新規薬剤候補についても、まずはHTLV-1関連細胞株等に対するin vitroでの効果を検証する。
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Causes of Carryover |
年度末納品等にかかる支払いが平成29年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。平成28年度分についてはほぼ使用済みである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のとおり。
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