2016 Fiscal Year Research-status Report
寄生性真核生物に見られる原核生物型転移RNAスプライシング関連酵素の解析
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15K08442
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邊 洋一 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (90323568)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | tRNAスプライシング |
Outline of Annual Research Achievements |
tRNA前駆体のスプライシングは、他のRNAスプライシングがRNA前駆体自身の酵素反応、あるいはトランスで働くRNA-タンパク質複合体の中のRNA部分の触媒反応によって進行するのに対し、タンパク質のみからなる酵素の触媒反応により進行する。tRNA前駆体を切断するヌクレアーゼは共通の祖先から進化しているものの、生物種によりそのサブユニット構造が大きく変化している。また、エキソン断片を連結するRNAリガーゼも、その反応機構から大きく二つのグループに分かれる。本研究では、真核生物におけるtRNAスプライシング関連酵素の多様性を明らかにするため、寄生性真核生物であるトリパノソーマ目原虫のtRNAスプライシング関連酵素の解析を進める。他の真核生物には通常2種類以上のヌクレアーゼサブユニット遺伝子が見つかるが、これらの原虫では、ヌクレアーゼ候補の遺伝子が一つしか見つからない。これは原核生物であるアーキアの一部で用いられる酵素と類似した特徴である。一方、これらのトリパノソーマ目原虫は反応機構の異なる二つのRNAリガーゼの両方の遺伝子を持っている。その一方の、アーキア、バクテリア、真核生物に広く保存されているRtcB型RNAリガーゼは、原虫ではバクテリア型酵素の配列上の特徴を持つ。この事は、トリパノソーマ目原虫が真核生物型ではなく、バクテリア型酵素を使用している可能性を示唆する。本研究の成果は、真核生物における原核生物型tRNAスプライシング関連酵素の利用の初めての例を示す可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、まず、ヌクレアーゼサブユニット遺伝子の解析を進めた。RT-PCR法により、同遺伝子のmRNAの5'末端をスプライスリーダー配列を利用して決定した。さらに、ヌクレアーゼに対する抗体作成用の抗原および酵素学的解析を目的として、同遺伝子を大腸菌に導入し、ヌクレアーゼの大量発現と精製を試みた。その結果、ヌクレアーゼの大量発現は確認できたものの、精製を進める段階で、沈殿してしまうことが分かった。一方、同遺伝子にアフィニティ精製用配列を付加した融合タンパク質の遺伝子を、原虫に導入し、その発現を試みたところ、タグ特異的抗体によりその発現が認められた。また、RtcB型RNAリガーゼ遺伝子についても、同様な原虫発現系を構築し、その発現を確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
原虫内で発現が認められたヌクレアーゼサブユニットおよびRtcB型RNAリガーゼを、アフィニティタグを利用して精製する。精製した画分について酵素活性を測定する。また、これらの画分に共存する因子について、ヌクレアーゼおよびリガーゼとの相互作用の可能性を検討する。
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Causes of Carryover |
計画の初年度に、教室の関連経費によって当該研究を推進することができ、当該補助金を節約することが出来た。このため、余剰の補助金を3年目に執行することになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費として標的タンパク質に対する特異抗体の作成のため約20万円、人件費として研究員雇用のため約100万円を充てる予定である。
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