2016 Fiscal Year Research-status Report
サルマラリア原虫が感染したヒト赤血球の微細構造と接着能の解析
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15K08444
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
坂口 美亜子 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (50400651)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川合 覚 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (70275733)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | サルマラリア / 感染赤血球 / 接着現象 / HUVEC |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、本来サルを宿主とするサルマラリア原虫Plasmodium knowlesiがヒトにも自然感染し重篤化して死亡する例が近年東南アジアの広範囲で報告されていることから、P. knowlesiが感染したヒト赤血球の構造と原虫分子の局在、接着能の有無を明らかにし、サルマラリア原虫がヒト赤血球においても接着現象を起こしうるのか否かを解明することである。 P. knowlesi感染赤血球の接着現象に関与し接着能を有すると考えられるSICAvar分子は多数のコピーが存在するため、当該年度では接着現象に直接関与するSICAvar分子を特定することを目的として、血管内皮細胞に対するP. knowlesi感染赤血球の結合アッセイを行った。まずクローン化したP. knowlesiがサル赤血球に感染した状態で、その感染赤血球を用いてヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)と共に混合培養し繰り返し結合アッセイを行ったところ、結合アッセイ6,7回目で約1,100感染赤血球/100HUVECsという接着反応が認められた。 そこで、結合アッセイ前の非接着性原虫クローンと結合アッセイ後の接着性原虫クローンについて遺伝子発現を比較し接着に関わるSICAvar分子あるいは他の候補分子を特定するため、RNA-seq解析を目的としてまず非接着性原虫クローンについて同調させ大量培養した後細胞を回収しRNAの精製をした。そしてmRNAを取得後ライブラリを作製し、次世代シーケンサーを用いて遺伝子配列の決定を行った。 また、従来のヒト赤血球に感染可能なP. knowlesiは長期培養が困難であったが、培地の組成を改良することにより数か月の継続的な培養が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クローン化したP. knowlesiが感染したサル赤血球とHUVECの結合アッセイを繰り返し行った結果、接着反応を確認することができた。 そして、P. knowlesiの培養に関しては時々細胞が不安定な状態になり増殖できずに死滅してしまう現象が見られたものの、現在は安定しており細胞同調や大量培養も可能となっているため、RNA-seq解析を行える状態となっている。 また、不安定だったヒト赤血球に感染可能なP. knowlesiの培養方法も改善がなされ、安定した長期培養を行うことができるようになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
HUVECに対するアッセイ前の非接着性原虫クローン及びアッセイ後の接着性原虫クローンについて遺伝子発現を比較するためのRNA-seqを引き続き行い、P. knowlesi感染赤血球の接着現象に関与し接着能を有すると考えられるSICAvar分子を特定する。 また、上記の結合アッセイはP. knowlesi感染サル赤血球とHUVECを使用したものであるため、ヒト赤血球に感染可能なクローン化したP. knowlesi感染ヒト赤血球を用いて同様にHUVECに対する結合アッセイを行い、接着現象が見られるかどうかを調べる。 同様に接着現象が確認できた場合は、結合アッセイ前と後の原虫について遺伝子発現を比較するため、RNA-seq解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度で血管内皮細胞との結合アッセイに使用するためのP. knowlesiを培養する段階で原虫の状態が不安定な時期があり、その間に細胞の同調や大量培養が上手く進まなかったため遺伝子発現を比較するためのRNA-seqを十分に行うことができなかった。 現在では培養に関する不安材料は解消されているため、細胞培養やRNA-seq解析に関する消耗品費を次年度の消耗品費として使用することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでに行っている結合アッセイ前の非接着性P. knowlesi原虫クローンのRNA-seq解析と同様に、結合アッセイ後の接着性原虫クローンのRNA-seq解析を行う。細胞を同調させて大量培養を行い、細胞を回収後にRNAを精製しライブラリを作製して遺伝子配列を決定する。 また、ヒト赤血球に感染したP. knowlesi原虫クローンのHUVECに対する結合アッセイを行って接着現象を確認後、同様に非接着性と接着性原虫クローンの遺伝子発現を比較する。 これらの実験について必要な試薬やディスポーサブル器具を購入するための消耗品費として使用する。
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