2015 Fiscal Year Research-status Report
グルコース摂取機構から探るエキノコックスの寄生適応戦略
Project/Area Number |
15K08454
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
松本 淳 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (70296169)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
孝口 裕一 北海道立衛生研究所, その他部局等, 研究員 (50435567)
上家 潤一 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (10400269)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 寄生虫 / 蠕虫 / エキノコックス / グルコース / トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
エキノコックスを含む条虫類は消化管を持たず、虫体の表面全体から種々の栄養素を摂取することが知られている。このことから、虫体表面には、宿主から栄養素を奪い取るための仕組みが存在すると推測されるが、この機能を担う分子はわかっていない。そこで私達は、エキノコックスの栄養摂取機構、特に糖の摂取を担う分子機構とその機能特性の解明を進めている。 これまでの解析により、糖輸送を担うことが予測されるトランスポーター遺伝3種類の全長塩基配列を取得した。構造解析の結果、2種類は細胞膜を隔てた糖の濃度勾配に沿って基質輸送をおこなう受動輸送型、もう1種類はNa+濃度依存性に糖の輸送をおこなう能動輸送型のトランスポーターであると予測された。これらのうち、2種類の受動輸送型トランスポーターについては、アフリカツメガエル卵母細胞を用いた解析により、糖輸送機能の特性を明らかにすることができた。一方、各トランスポーター遺伝子の発現レベルをリアルタイムPCRにより比較した結果、各遺伝子の相対発現レベルは虫体周囲の環境にともない変化することが確認された。 また、私たちは、各トランスポーターの発現レベルを質量分析法によってタンパクレベルで定量的に評価するための方法についても検討を進めた。その結果、上記3種類のトランスポーターについて、定量のための標準ペプチドを設計し、定量のための適切な条件を決定した。 エキノコックスのゲノム情報が整理されており、上記3種類に加えて新たにに3種類のトランスポーター候補遺伝子を、データベース上で見出した。これらについても、全長塩基配列を確認する予定である。残りの2年間で、計6種類の遺伝子について、糖輸送機能特性の解析と発現レベルの定量解析(mRNAおよびタンパクレベル)を完了し、エキノコックスによる糖摂取機構の全体像を明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にも記載した通り、今年の研究により、エキノコックスの糖輸送を担うことが予測されるトランスポーター遺伝子全長を3種類取得できた。また、これらの遺伝子の機能解析法および定量法も確立できた。残り2年間の研究機関の中で、当初予定した研究目標に到達できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
スタートの1年間の研究期間の中で、研究材料であるエキノコックスの虫体材料の確保、トランスポーターの機能解析および発現レベルの定量解析の手法について、本研究課題を順調に推進するためのレールを敷くことができたと判断している。次年度からは、博士課程大学院生および学部学生らが新たに研究に参加することになっており、彼らの協力を得ながら、引き続き研究課題の遂行に努めたい。さらに、トランスポーター研究領域のエキスパートによるサポートを得ることにより、当初の計画を超える研究成果につなげられると期待されるが、そのための具体的なアクションをおこすことに消極的であった。今後は、寄生虫学領域にとどまらず、異分野の研究集会等での成果発表を積極的に進めていきたい。
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Causes of Carryover |
実験用消耗品の使用が、当初の見積もりよりも大幅に少なかった。また、海外で開催される学会への参加費用については、初年度は本科研費以外の研究予算から支出することができた。さらに、研究補助の謝金を支払う予定だった大学院生(1名)が、やむを得ない理由により研究に参加できなくなったため、謝金の支出もなかった。主に以上の理由から、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、新たに大学院博士課程に入学した院生(1名)および学部学生数名が、本研究に参加する予定である。これにより、研究進展のスピートアップが期待できる。これに伴い、実験用消耗品の使用増が見込まれることから、次年度使用額の半分(40万円)程度をこれに充てる。また、約20万円を海外学会への参加旅費に充て、残りの20万円を研究補助に対する謝金として支払う予定である。
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Research Products
(4 results)