2016 Fiscal Year Research-status Report
限定的発現遺伝子群espの機能解析による新たな細菌特性の解明
Project/Area Number |
15K08457
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
森川 一也 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90361328)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 黄色ブドウ球菌 / 乾燥耐性 / esp |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、申請者らが見出した少数の細胞に発現するブドウ球菌遺伝子群(限定的発現遺伝子esp :expression in minor subpopulation)の役割を解明することで限定的発現に基づく新規な細菌特性を明らかにすることを目的としている。本年度はesp遺伝子群の強制発現株の表現型解析から興味深い結果を得た。 発現量が異なる強制発現ベクターを2種類(強発現用と低発現用)作成した。これらは強度の異なるプロモーター配列を用いており、組み込む遺伝子の発現量が異なる。各発現限定遺伝子を2種類の強制発現プラスミドに組み込み、黄色ブドウ球菌RN4220株およびN315株に導入した。これにより発現限定遺伝子それぞれにつき4種類の強制発現株を得た。RN4220高発現プラスミド導入株において、いずれの発現限定遺伝子の場合にも増殖速度の低下は見られなかった。各強制発現株の性状(コロニー形態、寒天培地上でのスプレッディング、各種薬剤感受性、糖の利用などの各種細菌生化学的特徴、ポリスチレン表面への接着、乾燥耐性度など)を調べた。このうちesp17と名付けた発現限定遺伝子の強制発現株で乾燥耐性化が認められた。esp17は転写因子であると予測され、その食塩耐性への関与を示唆する論文報告があるが、具体的な食塩耐性化・乾燥耐性化メカニズムは不明であり今後の課題である。本研究によって、細胞集団の不均一性が本菌の乾燥耐性メカニズムを担うという新たな可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
esp17強制発現が起こす表現型について乾燥耐性化という新たな知見が得られ、研究を次の段階へとすすめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度にesp17の過剰発現によって細胞が乾燥に耐性化することを見出したが、esp17がどのように乾燥耐性に寄与するかは不明であり、今後明らかにするための実験をすすめる。Esp17は転写因子であると予想されるため、今年度はそのレギュロンを検討し、どの遺伝子が乾燥耐性に寄与するかを分子遺伝学的に明らかにする。esp17遺伝子周辺の遺伝子群の関与をまず検討する。 また、esp17はGFPレポーター解析によって限定的発現遺伝子の一つとして同定したが、esp17およびそのレギュロンがどのような環境でどのような頻度で発現しているかは不明である。そこで、本年度はこれらを特に乾燥ストレスや浸透圧ストレス下での発現状況を中心に検討する。 その他のesp遺伝子については、各破壊株の作成を完成させ、各種表現型を検討する。esp遺伝子群が集団の全体ではなく一部のみで働くことが重要である可能性も高いことを考慮し、強制発現株と破壊株の混合集団の特性もあわせて検討する。
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