2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K08460
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大谷 郁 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (30377410)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ウェルシュ菌 / 芽胞形成 / 二成分制御系 |
Outline of Annual Research Achievements |
グラム陽性嫌気性桿菌であるウェルシュ菌は多数の毒素を産生しその協調作用によってガス壊疽などの特徴ある病態を形成する。また本菌は芽胞を形成し、芽胞形成時に産生されるエンテロトキシンによる食中毒も引き起こす。ガス壊疽発症にも芽胞は鍵となっており、傷口に芽胞が混入することが感染成立の第一段階となることより、ウェルシュ菌感染症において芽胞は非常に重要である。 芽胞形成調節はバシラス属でその詳細が明らかとなってきているが、特にシグナルが細胞内に入る部分がクロストリジウム属とバシラス属では異なると報告されており、クロストリジウム属細菌においてはバシラス属のシグナルの入り口にあたるタンパクは報告されていない。ウェルシュ菌strain13株には28の二成分制御系が存在し、これらが様々な外界のシグナルを感知し多様な環境に適応していると考えられるが、芽胞形成シグナルの入り口を明らかとするため、これまでのマイクロアレイデータをもとに、芽胞形成に関与する可能性のある二成分制御系システムを抽出しSM101株を用いて変異株を作製した。2つの二成分制御系について変異株作製を試みたが、1つについて作製することができ相補株の作製も行った。芽胞形成効率は変異株で野生株と比べて低下し、相補株で野生株と同程度であったことから、この二成分制御系が芽胞形成調節に関与していることが強く示唆された。現在、この二成分制御系の支配下にある遺伝子群の解析や、センサータンパクの感知するシグナルについて検討中である。 また酪酸菌との共培養を行い、ウェルシュ菌の芽胞形成効率を確認した。その結果、共培養により芽胞形成効率が低下することが明らかとなり、現在そのメカニズムの詳細について検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は遺伝子相補株の作製に予想よりはるかに多くの時間を要した。SM101株の遺伝子導入効率はこれまで用いてきたstrain 13株より悪く、相補株もプラスミドとして相補した場合、single-crossで相補した場合で結果が異なる場合がある。今年度は二成分制御系の変異株の作製から、相補株の作製を行ったが、single-crossでの相補株の作製に時間を要した。結果としては相補株が作製でき、芽胞形成効率の実験結果からも野生株と相補株が類似の結果を示していることから実験系もうまくいっていると考えられる。このため、今後の遺伝子発現解析等はスムーズに進められると考える。 また、共培養の実験においては、共培養で芽胞形成効率に変化が見られた場合は、シグナル物質を培養上清からの精製を開始したいと考えていたが、培養条件等の検討に時間を要したことから、予定より実験進度が遅くなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在とれている二成分制御系の変異株、相補株の遺伝子発現を芽胞形成関連遺伝子を中心に解析していく。同時に毒素遺伝子群についても解析を行い、毒素産生と芽胞形成の切り替え段階の遺伝子発現について検討する。この発現解析の段階で、既知の芽胞形成調節遺伝子との関連も検討していく。もう一つの二成分制御系の変異株の作製も継続して行う。またシグナルのスクリーニングも行う。特に環境中で共存する可能性のある他の細菌からのシグナルを中心に解析する。共培養系に関しては、芽胞形成に影響を与えることが明らかとなったため、今後はその詳細なメカニズムを明らかとしていく。これまでに毒素産生にも影響を与えることが明らかとなっているので、同様のシステムによる調節であるのかどうかの検討を中心に行っていく。毒素産生調節とは異なったシステムを用いて芽胞の形成効率が影響を受けているようであれば、培養上清からシグナル物質の精製を行い、どのシステムを経て調節を受けているのかの検討も行っていく。
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Research Products
(5 results)