2016 Fiscal Year Research-status Report
サルモネラのNF-κB活性化制御タンパク質群の包括的機能解析
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15K08470
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
羽田 健 北里大学, 薬学部, 講師 (00348591)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | サルモネラ属細菌 / III型エフェクター / NF-κB活性化制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はサルモネラ属細菌のIII型エフェクターによるNF-κB制御機構を明らかにすることを目的とする。 これまでに研究代表者らは、サルモネラ属細菌における既知のIII型エフェクターを網羅的に解析し、NF-κB活性化を制御する機能をもつ7つのタンパク質SreABCDEFGを同定した。平成27年度は互いにアミノ酸相同性を有するSreABCについて、生化学的な機能解析を行い、SreAおよびSreBが金属プロテアーゼ活性をもち、NF-κB p65を特異的に消化し、p65の核移行を阻害することでNF-κB活性化を制御することを明らかにした。 平成28年度はまず、SreCについてさらに詳細な生化学的機能解析を行った。その結果、SreCもSreABと同様の酵素活性をもつが、SreCの活性はSreABと比べて弱いことが示唆された。次にサルモネラ属細菌の感染によってNF-κB活性化が制御されるか否かを明らかにするために、これまで同定したNF-κB制御タンパク質SreABCDEFGをコードする遺伝子全てを欠失したネズミチフス菌(Salmonella Typhimurium)を作製し、HeLa細胞に感染させた。その結果、感染2時間後のHeLa細胞において、S. Typhimurium野生株ではp65の消化が認められたに対し、SreABCDEFG欠失株では認められなかった。このことから、サルモネラ属細菌の感染初期においてNF-κB活性化が制御されていることが示唆された。また、SreABCDEFGの各種欠失変異株を作製し、同様の感染実験を行った結果、SreAおよびSreBが感染初期のNF-κB活性化制御に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度以降はサルモネラ属細菌の感染におけるNF-κB活性化制御機構を明らかにする予定である。研究代表者らはこれまでに、既知のIII型エフェクターのアミノ酸相同性からNF-κB活性化制御タンパク質を同定してきたが、NF-κB活性化の制御を感染実験で明らかにすることができなかった。そこで平成28年度は、S. Typhimuriumにおける全てのNF-κB活性化制御タンパク質を同定し、これら全ての遺伝子を欠失させることで、サルモネラ属細菌の培養細胞感染系においてNF-κB活性化制御を明らかにした。さらに同定したNF-κB活性化制御タンパク質のうち、欠失させる遺伝子の組み合わせを変えることで、2つの遺伝子が感染初期のNF-κB活性化制御に関与することが示唆された。 一方、昨年度の研究の推進方策として上げたSreCの基質タンパク質の同定については、精製したSreCタンパク質とHeLa細胞の細胞溶解液を混合したのち、二次元電気泳動により展開し、消化されたタンパク質の断片をゲルから切り出し、質量分析により解析する予定であった。しかしながら、反応させるタンパク質の量を増やしても、消化断片を確認することができなかったため、実験を中止した。 以上のことから、本研究課題の進捗状況としては、全体的には概ね進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、培養細胞を用いたサルモネラ属細菌の感染実験により、SreABが感染初期のNF-κB活性化制御に関わることが示唆された。平成29年度はマウスを用いたin vivo感染実験を行うことで、サルモネラ属細菌の感染におけるNF-κB活性化制御機構を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
SreCの基質タンパク質を同定する実験を中止したため。二次元電気泳動、トリプシン消化および質量分析に必要な泳動用ゲル、蛍光色素、一般試薬等(消耗品)を購入しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度未使用金は全額、平成29年度に消耗品として使用する予定である。平成29年度はマウスを用いた感染実験が中心となることから、消耗品費は主にマウス購入費、飼育管理費、抗体類、組織切片作製費にあてる。平成29年度は消耗品費1472千円、国内旅費100千円、謝金100千円、その他100千円を想定している。
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