2015 Fiscal Year Research-status Report
志賀毒素の細胞内輸送を標的とした新規腸管出血性大腸菌感染症治療薬の創出
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15K08480
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
高橋 美帆 同志社大学, 生命医科学部, 助教 (00446569)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Stx阻害ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の成果1)Stx1a Bサブユニットのサイト2を標的とするFRA-tet以外の10種の阻害ペプチドのうち、少なくともKGA-tet, YTA-tet, PQA-tetが、MMA-tetとの組み合わせにより、相乗的なStx1毒性阻害効果を示した。ベロ細胞に、低濃度のMMA-tet(10μg/ml)あるいは各サイト2阻害ペプチド(30μg/ml)を単独で処理すると、最大10%程度のStx1毒性阻害能を示した。そこで次に同濃度のMMA-tetと各サイト2阻害ペプチドを同時に添加したところ、KGA-tet, YTA-tete, PQA-tetは15-20%程度の阻害能を示した。 研究の成果2)ベロ細胞を用いて、MMA-tetとFRA-tet(最終濃度各50μg/ml)を組み合わせた場合の各種細胞内シグナル伝達分子の影響を検討したところ、MMA-tet, FRA-tetを単独で作用させた場合には、いずれのペプチドもStx1aによるERKの活性化を阻害するが、JNK, p38, Aktの活性化は阻害しないことが明らかとなった。また、MMA-tetとFRA-tetを組み合わせた場合には、Stx1aによるERKの活性化を阻害するが、この効果はペプチドを単独で作用させた場合と比べて同程度であることがわかった。一方、JNK, p38, Aktの活性化には影響をおよぼさないことも明らかとなった。これらのことから、MMA-tetとFRA-tetを組み合わせて投与した場合にみられるStx1aの細胞内輸送遅延は、ERK活性化抑制のみでは不十分であり、JNK, p38, Aktの活性化抑制は関与していないことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度の研究実施計画1)について、当初の計画の50%完了している。FRA-tet以外の、相乗的Stx毒性阻害効果を示す阻害ペプチドを3種類同定している。これら阻害ペプチドを用いた際のStx1細胞内輸送に及ぼす影響についての解析が未完了である。現在、MMA-tetとサイト2阻害ペプチド(FRA-tet, 新たに同定された3種類)を組み合わせた場合の、蛍光標識STx1aの細胞内輸送への影響を、共焦点レーザー顕微鏡を用いて各種オルガネラマーカーとの共局在性を解析中である。 研究実施計画2)については、計画通り進行している。本研究は平成28年度も継続実施予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)MMA-tetと各サイト2阻害ペプチドを組み合わせた場合のStx1a細胞内輸送の影響について、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、各種オルガネラマーカーとの局在性を調べる。エンドソームからゴルジ体への輸送に関係する分子、リサイクリング経路、ライソゾーム経路、オートファジー経路等、各種特異的マーカーを用いて検討を行う。 2)MMA-tetとサイト2阻害ペプチドを組み合わせた場合の、Stx1による各種シグナル伝達分子活性化に対する影響を検討する。 3)従来のサイト2阻害ペプチドを、より強いStx毒性阻害作用をもつ分子に進化させるために、独自に開発した多価型ペプチドライブラリーとIntavis社のスライドスポッターを組み合わせた新たな系を確立し、本系を用いてサイト2特異的結合能力を指標にスクリーニングし、従来の阻害ペプチドよりも結合特異性ならびに親和性に優れた候補阻害薬群を取得する。
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Research Products
(1 results)