2016 Fiscal Year Research-status Report
病原細菌の菌体表層にみられるフィブロネクチン結合タンパク質群の病原的機能と構造
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15K08481
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
片山 誠一 岡山理科大学, 理学部, 教授 (70169473)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫃本 泰雄 岡山理科大学, 理学部, 教授 (90136333)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Clostridium perfringens / fibronectin (Fn) / Fn-binding protein |
Outline of Annual Research Achievements |
ウェルシュ菌(Clostoridium perfringens)は、ヒトにガス壊疽と食中毒を起こす原因菌として知られているグラム陽性有芽胞細菌である。この細菌にヒトのフィブロネクチン(Fn)が結合することが明らかとなっている。現在までに、この菌のペプチドグリカン層の中に5つのFn結合タンパク質(fibronectin-binding protein; Fbp)が見出された。そのうち、2つのFbp(FbpC, FpbD)が、菌体表面に表出していること、Fn分子中のIII9-10領域に結合することが明らかとなった。今年度、FbpC, FbpDのN末端領域とC末端領域をコードする遺伝子をクローニングし、それぞれの組換えタンパク質のFn結合能を調べた。さらに、これらの遺伝子をウェルシュ菌内で発現させて、その機能を調べることを試みた。面白いことにFbpCのN末端領域は、Fn結合活性を持ち、この菌のペプチドグリカンの結合する活性を持つことが示された。このN末端領域には、黄色ブドウ球菌等で見出されたFn-binding repeatsは存在せず、代わりに、口腔細菌等でみられるcell wall-binding repeatsと相同なアミノ酸配列が存在している。このことから、新しいFn-binding repeatsである可能性が示唆された。大変興味深い結果が得られたと評価している。次に、FbpCのN末端領域をコードする遺伝子をクローニングしてFbpC(CPE0625)とFbpD(CPE0630)の両遺伝子を欠失したウェルシュ菌13株の中で発現させたところ、全く発現しなかった。これによりFbpCの直上流には、プロモーターが存在せず、オペロンを形成していることが明らかになった。これらの結果を踏まえて今後の研究を進展させていくつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)13株のペプチドグリカン層から見出された5つのFbpからFbpC(CPE0625)とFbpD(CPE0630)が、菌体のFn結合に関与している可能性がフローサイトメトリー法により示された。しかし、この2つのFbpが本当に菌体のFn結合にどれだけ貢献しているかは定かではない。これを明瞭に示す方法が、確立していないため、昨年の実験計画にあったFnを持つ培養細胞へのウェルシュ菌の付着とこのタンパク質の関係を示す実験には、未だ着手していない。これが、研究を遅らせている最大の理由である。FbpC, FbpDの機能がより明確になった時点で、細胞への付着への関与と、それぞれのタンパク質の立体構造解析に着手できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、3つの方向で研究を進めている。1)FbpC、FbpDのN末端、C末端に存在するモチーフの機能解析である。FbpCは、N末端領域にcell wall-binding repeatsを持っている。このrepeatsは、ペプチドグリカンヘの結合に関与するとともに、Fn結合活性を有することが明らかになった。FbpDのN末端領域も同様な機能があると考えられ、このことを今年度明らかにして行きたい。2)FbpC(CPE0625), FbpD(CPE0630)遺伝子の構造解析を進めていきたい。今までのところ、fbpCは単独の遺伝子であるが、fbpDはオペロンを形成していることが分かってきた。プロモーターの位置と、遺伝子制御システムがあるのかどうか示していきたいと考えている。3)ウェルシュ菌がFnを結合する際、FbpC, FbpDがどれほど貢献しているのか明らかにする。これは、本研究課題の中でも最も重要なポイントと考えており、何としても今年度中に示して行きたいと考えている。これを達成すると遅れているウェルシュ菌の細胞への付着に関与しているのか明らかにすること、これらのタンパク質の立体構造解析へ研究を進めることが出来ると考えている。
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Causes of Carryover |
当該研究を進める研究費の消費量が今年度少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
フィブロネクチン結合タンパク質の構造解析を進めるため、大量培養を試みて行く。また、フィブロネクチンとのウェルシュ菌の結合を調べるための設備投資などに当科学研究費をあてていきたいと考えている。
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Research Products
(10 results)