2016 Fiscal Year Research-status Report
高まん延多剤耐性結核菌株のゲノム解析による高病原因子の探索
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15K08489
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Research Institution | Osaka Prefectural Institute of Public Health |
Principal Investigator |
田丸 亜貴 大阪府立公衆衛生研究所, 感染症部, 主任研究員 (70270767)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 壮吉 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30244073)
和田 崇之 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (70332450)
金子 幸弘 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90469958)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 多剤耐性結核菌 / 全ゲノム解析 / 一塩基変異多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、申請者が発見した感染性の高い多剤耐性結核菌株群(V02群)を全ゲノム一塩基変異解析し、V02群特異的遺伝子変異を検出し、そのうち「結核菌感染性マーカー」として使用しうる遺伝子変異を特定することを目的とする。 2016年度は、V02 群15株と非V02群結核菌11株について、次世代シーケンサーデータ解析ソフトCTC Gridにより全ゲノムシーケンスを比較し、V02群特異的変異を調査した。全ゲノムシーケンスに基づいたPhylogenic tree解析の結果から、非V02群のうち、多剤耐性結核菌で形成された同一遺伝子型群M02群の2株がV02群と最も遺伝的に近い株であることが分かった。そこで、V02群とM02群の全ゲノムシーケンスを比較したところ、113か所のV02群特異的非同義的変異を特定した。V02群特異的非同義的変異のある遺伝子について、アミノ酸データベースUniProtKBにて機能を調べた結果、53個について機能が明らかになった。53個のうち、結核菌の増殖に関与する遺伝子が16個あり、そのうち4個が病原性に関与する機能を有していた。4個の病原性関与遺伝子のうちpknI遺伝子のみが結核菌の増殖のnegative regulationの機能を持っており、pknI遺伝子変異により、酸性状態での結核菌の増殖増加、マクロファージ内での結核菌増殖の増加、免疫低下マウスに対するhypervirlence化が報告されている。これらの結果から、V02群特異的変異のうちpknI遺伝子が「結核菌感染性マーカー」である可能性が高いと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝的類似の高い非V02群株との比較により、予想していたとおりにV02群特異的非同義変異の数が検討可能な数に絞り込めたため、「感染性マーカー変異の候補」が特定できた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、pknI遺伝子を「感染性マーカー変異の候補」として、同遺伝子の変異の有無を規模集団感染原因結核菌株や地域まん延結核菌株、単独遺伝子型結核菌株を用いて調査する予定である。また、結核菌では菌にダメージを与える遺伝子変異が起こった場合に補完的に働く遺伝子変異(補完的遺伝子変異)の存在が報告されている。V02 特異的遺伝子変異のなかにも補完的遺伝子変異がないか精査する予定である。
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Causes of Carryover |
次世代シーケンサによるリード取得料が2016年度中に請求されなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度に2016年度末実施の次世代シーケンサによるリード取得料が請求されるので、2017年度の研究費は予定通りとなる。
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Research Products
(1 results)