2015 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザウイルスの流行状況把握とヒト上部気道への適応メカニズム解析
Project/Area Number |
15K08491
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 晋弥 東京大学, 医科学研究所, 助教 (90466839)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | インフルエンザ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的の1つは、インドネシアの家禽や豚で流行しているインフルエンザウイルスの流行状況把握を行い、更に分離ウイルスの性状解析を行うことでパンデミックのリスク評価を行うことである。その目的達成のため、申請者は、インドネシアを訪問し、インドネシア・アイルランガ大学のNidom博士らの協力のもと、インドネシア国内のH5N1ウイルスの流行地域を始めとする様々な地域の養鶏場や小規模農場に赴き、鶏やウズラなどの家禽などから検体(咽頭ぬぐい液等)採取を実施した。採取した検体は、Nidom博士らが以前、採取していた検体と共に、東大・医科研・ウイルス感染分野に輸入し、発育鶏卵を用いてウイルス分離を試みた。その結果、2013年の検体から4株、2014年~2015年の検体から7株のH5N1インフルエンザウイルスが分離された。なお、H7N9やH5N6亜型等のウイルスは分離されなかった。 遺伝子解析の結果、2013年の4株は同日に同じ地域で採取された検体から分離されたが、2株は発生当初からインドネシアで保持されてきたクレード2.1.3に属する株であり、他の2株は、2012年にベトナムから流入したと考えられるクレード2.3.2に属する株であった。つまり、現在、インドネシアでは、異なるクレードのウイルスが混在して流行していることが明らかになった。そのため、クレード2.1.3とクレード2.3.2のウイルスが同一宿主に感染することで遺伝子交雑が起こり、新たな性状を持つリアソータントウイルスが出現する可能性が考えられる。2014年~2015年の7株について、全遺伝子を解析した結果、いずれもすべてのセグメントがクレード2.3.2株由来の遺伝子であり、遺伝子交雑は確認されなかった。なお、いずれの株においても、レセプター特異性や薬剤感受性への影響が報告されている変異は生じていなかった。 今後は、分離したウイルスの培養細胞での増殖性や実験動物における病原性を解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度の実施計画にある、「インドネシアにおける検体採取・ウイルス分離および分離ウイルスの遺伝子解析」は実施できているものの、分離ウイルスの性状解析は現在、実施中であり、まだ結果が得られていないため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に分離したウイルスについての培養細胞における増殖性解析およびマウスを用いた病原性解析は平成28年度上半期には終了する予定である。また、平成28年度以降も、引き続きインドネシアを訪問し、流行地域にて検体採取活動等を実施する予定である。
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