2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K08494
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村田 貴之 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30470165)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | EBV |
Outline of Annual Research Achievements |
EBV(Epstein-Barr virus)はガンマヘルペスウイルスに属し、普遍的に存在する病原性ウイルスである。唾液を介して感染し、初感染で伝染性単核症、のちにバーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、胃癌、上咽頭癌、慢性活動性EBV感染症、T/NKリンパ腫などの原因となりうる。EBVは巨大なゲノムを持つウイルスで80を超える遺伝子をコードしており、未だに同定されていない、あるいは機能が解明されていない遺伝子が数多く存在する。 本研究では、このようなEBVの未同定、未解明遺伝子に着目し、これらの同定、および機能解析を進めることで、ウイルスの基礎的な性状解析を行うことを目的としている。このような研究は基礎ウイルス学的に重要であるばかりでなく、新規創薬ターゲットやワクチンターゲットとなりうるようなウイルス遺伝子の開発に寄与することができる。なお、EBV遺伝子には他のヘルペスウイルスに保存されている遺伝子も多く、そうした遺伝子については他のヘルペスウイルスによって既に解析が進んでいる場合が多いため、ここでは主にガンマヘルペスウイルスに特異的に保存されている遺伝子に着目する。このような方針により、腫瘍原性や宿主特異性など、他のヘルペスウイルスにはない、ガンマヘルペスウイルスの特徴の一部を決定づける機構が明らかになる可能性もある。 本年度は三年計画の一年目であるが、非常に順調に進行している。本申請で着目しているウイルス遺伝子のうち、BRRF2、BGLF3.5、BDLF4についてはすでにイニシャルキャラクタライゼーションを終え、論文として発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は三年計画の一年目であるが、当初の期待以上に順調に進行している。BRRF2、BGLF3.5、BDLF4については抗体を作製してウイルスタンパク質を同定した上、大腸菌内遺伝子組み換えの手法で欠損ウイルスを作製して、そのフェノタイプを野生株や変異復帰株(リバータント)と比較検討した。 BRRF2はウイルス産生時、感染性ウイルス粒子の成熟やウイルス粒子の放出に貢献する遺伝子であることが明らかになった(Watanabe et al., Virology 2015 p33)。 BGLF3.5については、ウイルス増殖について欠損株と野生株、リバータントとの間に有意な差が認められなかったことから、少なくとも培養細胞レベルでのウイルス増殖には不要であることが明らかになった。しかし、このBGLF3.5及び周囲のウイルス遺伝子の転写産物を注意深く解析したところ、BGLF3.5の発現は翻訳停止(translation termination)によって抑制されており、下流のBGLF4というウイルス増殖に重要な役割を果たすキナーゼ遺伝子の発現が翻訳停止/再開始(termination re-initiation)という、極めて特殊なメカニズムによって増強されていることが分かった(Watanabe et al., 2015 Virology p44)。 BDLF4は、ウイルスの後期遺伝子の発現制御に非常に重要な役割を果たす転写複合体のひとつで、欠損するとウイルス後期遺伝子の発現が正常にできなくなることを見いだした(Watanabe et al., J Virol. 2015 p10120)。 この他、さらにEBVのDNA複製ポリメラーゼであるBALF5遺伝子の特異的モチーフについても報告した(Narita et al., Sci Rep 2015 11767)。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は非常に順調に推移し、BRRF2、BGLF3.5、BDLF4についてはイニシャルキャラクタライゼーションを終えた。今後は当初の計画通り、これらの遺伝子の部分的なtruncating mutationを作製し、これらの遺伝子のどこにその機能モチーフや重要な領域がマップされているのか明らかにしていく。また、感染細胞のライセートを用いて免疫沈降やGSTプルダウンなどを行ったのちに質量分析を遂行し、宿主もしくはウイルスの何らかの遺伝子産物との相互作用を探索していく。特にウイルス粒子のテグメントに取り込まれることが明らかになっているBRRF2や、テグメントタンパク質であることが期待されるBGLF3.5については、精製ウイルス粒子中での他のテグメントやカプスドタンパク質との関係性についても観察したい。 この他、現在BKRF4とBRRF1というウイルス遺伝子についても抗体を作製し、イニシャルキャラクタライゼーションを行っているところである。BKRF4は同じガンマヘルペスウイルス属に含まれるカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)のORF45に相当する遺伝子であるが、EBV BKRF4はKSHVの遺伝子産物とは若干異なる挙動を示すものであることが分かってきている。BRRF1については、実は既に二本ほどアメリカからの報告があるが、アメリカからの報告は全く再現できず、既報とは全く異なる機能を観察している。BKRF4とBRRF1、いずれも既報とは異なる部分が見えてきていることもあるので、今後はより丁寧に解析を進め、誰もが納得するソリッドな報告を目指したい。
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[Journal Article] Induction of Epstein-Barr Virus Oncoprotein LMP1 by Transcription Factors AP-2 and Early B Cell Factor2016
Author(s)
Murata T, Noda C, Narita Y, Watanabe T, Yoshida M, Ashio K, Sato Y, Goshima F, Kanda T, Yoshiyama H, Tsurumi T, Kimura H
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Journal Title
J Virol
Volume: 90
Pages: 3873-89
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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