2016 Fiscal Year Research-status Report
アラキドン酸カスケードによる感染性C型肝炎ウイルス粒子形成制御機構の解析
Project/Area Number |
15K08495
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土方 誠 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 准教授 (90202275)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | HCV / 粒子形成 / トロンボキサン |
Outline of Annual Research Achievements |
トロンボキサンA2合成酵素(TXAS)による感染性HCV粒子産生の分子機構を明らかにするため、TXAS阻害剤処理未処理細胞間の遺伝子発現様式を比較し、この現象に関わる遺伝子を同定することを試みた。これまでにマイクロアレイ法を用いて遺伝子発現様式の解析を行ったが、マイクロアレイ解析では明らかに発現が異なる遺伝子群を検出することができなかった。そこでさらに感度が高いCAGE法を用いて、上記細胞間で遺伝子発現様式の解析をおこなったところ、数種類の遺伝子の発現変動を認めた。これらの結果を検証するために各遺伝子産物量の検証を行った。しかしながら、siRNAによる遺伝子発現抑制やクローニングした遺伝子のcDNAの発現を用いて、確認できた遺伝子産物と感染性HCV粒子産生との関連の解析を進めたが、その関連は認められなかった。そこでTXAS阻害剤の効果が、遺伝子発現の大きな変化によるものではなく、なんらかのタンパク質の機能修飾などに関連する可能性を考えて、上記のような処理をした細胞と対照細胞における代謝産物の解析をおこなうため、メタボローム解析をおこなった。現在その結果の解析と感染性HCV産生の関連を検証中である。そして、感染性HCV粒子の産生は細胞内の脂肪滴周囲でおこなわれることを我々は報告しているため、TXAS阻害剤による脂肪滴周囲のタンパク質構成の変化についても検討しつつある。また、一方、これまでに当研究室では脂肪酸生合成系がHCVのゲノム複製に重要であることを見出していたが、脂肪酸生合成系の初発酵素であるアセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤でHCV感染細胞を処理すると、HCVゲノム複製に加えて、感染性HCV粒子の産生の抑制効果があることを見出している。現在、TXAS阻害剤処理と脂肪酸生合成系の活性について関連を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
トロンボキサンA2合成酵素(TXAS)による感染性HCV粒子産生の分子機構を明らかにするため、TXAS阻害剤処理未処理細胞間の遺伝子発現様式を比較し、この現象に関わる遺伝子を同定することを試みた。これはトロンボキサンA2がこれまでの研究結果から既知のトロンボキサンA2受容体以外の受容体を介したシグナル系を活性化することによって引き起こす現象であることが考えられたためであった。しかしながら、少数の遺伝子の発現誘導がこの現象に関わっているとは限らず、多くの遺伝子のわずかな発現変化が同調することで生じる現象も存在しうること、そして、遺伝子発現ではなく、転写後修飾が昨日する可能性も考えられたことからこれらの点に解析方法を変更する必要が出てきたから。
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Strategy for Future Research Activity |
TXAS阻害剤処理未処理細胞間の遺伝子発現の相違をもとに解析を進めてきたが、有意な結果は得られなかったため、タンパク質レベルの解析を進める。方法としてはTXAS阻害剤処理未処理細胞のそれぞれから、感染性HCV粒子産生が行われていると考えられる脂肪滴を精製し、そのプロテオーム解析等をおこなう。またTXAS阻害剤処理未処理細胞についてメタボローム解析から細胞内の代謝変化などを解析して、タンパク質の機能の変化を同定して、感染性HCV粒子産生との関連を明らかにすることを目指す。
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