2016 Fiscal Year Research-status Report
ナチュラルキラー細胞による肝炎ウイルス感染認識機構の解明
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15K08498
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
團迫 浩方 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (80379841)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | C型肝炎ウイルス / 自然免疫応答 / NK細胞 / NKG2Dリガンド / ヒト不死化肝細胞 / 細胞障害性 / IFN-gamma |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、肝炎ウイルス感染に対するナチュラルキラー(NK)細胞の自然免疫応答の全体像を明らかにするため、研究期間内に以下の3項目を検討する予定にしている。 (項目1)NK細胞による肝炎ウイルス感染肝細胞の認識機構(平成27年度) (項目2)NK細胞が肝炎ウイルスを排除する機構(平成28年度) (項目3)肝炎ウイルスが持続感染するためにNK細胞に対する抑制機構(平成29年度)
前年度(平成27年度)は、項目1を遂行した。最初に、全てのHCVタンパク質を恒常的に発現するヒト不死化PH5CH8細胞(PH5CH8 C-NS2/NS3-5B細胞)を作成し、この細胞内で変動するNKG2Dリガンドの同定を行った。その結果、あるNKG2Dリガンド(論文準備中のため、Xとする)の遺伝子レベルが変動していることを見出した。本年度(平成28年度)はNKG2DリガンドXを介したNK細胞活性化機構や、活性化されたNK細胞がHCVを排除する機構を明らかにすることを試みた(項目2)。最初に、NKG2DリガンドXがPH5CH8 C-NS2/NS3-5B細胞の細胞表面に発現していることをフローサイトメーターにより明らかにした。PH5CH8 C-NS2/NS3-5B細胞とNK細胞株NK-92の共培養はNK-92細胞による細胞障害性を亢進した。また、肝がん細胞株HuH-7細胞由来RSc細胞でのHCV感染もNKG2DリガンドXの遺伝子レベルや細胞表面発現を亢進することを明らかにした。HCV感染RSc細胞とNK-92細胞との共培養は細胞障害性やIFN-gammaの誘導を亢進した。これらの結果は、HCVはNKG2DリガンドXの細胞表面発現を亢進することにより、NK細胞により認識されることを示唆している。さらに、NK細胞は細胞障害性やIFN-gammaの誘導により、HCV感染細胞を攻撃しているものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の柱である3項目のうち、項目1(平成27年度遂行)と項目2(平成28年度遂行)は当初の計画どおり順調に進展している。前年度(平成27年度)は、HCVにより発現変動するNKG2Dリガンド(論文準備中のため、Xとする)を同定することができた。本年度(平成28年度)は、HCVがNKG2DリガンドXの細胞表面発現を亢進することにより、NK細胞により認識されることを明らかにした。また、NK細胞が細胞障害性やIFN-gammaの誘導により、HCV感染細胞を攻撃していることも明らかにした。現在、これらの結果をまとめて、論文準備に取りかかっている。このように、現在までの進捗状況は概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度(平成27年度)と本年度(平成28年度)共に、当初の計画どおり順調に進展している。そのため、最終年度(平成29年度)も当初の計画どおり、研究を遂行する。
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Causes of Carryover |
本年度の当初の研究計画では、NK細胞が肝炎ウイルスを排除する機構として、(1)NK細胞による細胞障害性やIFN-gamma産生によるもの、あるいは(2)NK細胞から産生されたexosome内のmiRNAや抗ウイルス分子によるもの、を想定していた。しかし、本年度の研究成果から、NK細胞はHCV感染細胞と接触後、細胞障害性やIFN-gamma産生を誘導することが明らかとなった。そのため、(2)の解析にかかるexosome抽出キット(20万円と計上)、ヒト初代肝細胞(20万円と計上)、miRNA array解析(20万円と計上)やMir-X miRNA First-Strand Synthesis Kit(5万円と計上)などの購入は中止した(合計約100万円)。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究計画では、HCV感染肝細胞から産生されるexosomeによるNK細胞の機能に対する影響を解析する予定にしている。そのため、exosomeの抽出に必要なキット類の購入を増額させることにした(30万円増額)。また、exosome内のmRNAやmiRNAを網羅的に解析するためのcDNAマイクロアレイ解析(35万円と計上)やmiRNA array解析(35万円と計上)にかかる費用にも充当することとした。
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