2015 Fiscal Year Research-status Report
感染初期に注目したセンダイウイルス持続感染細胞における重感染阻止機構の解明
Project/Area Number |
15K08500
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
五藤 秀男 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (50323639)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 圭介 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (90625071)
松本 祐介 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00735912)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ウイルスの干渉 / センダイウイルス / 重感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々が作製したGFP発現組換えセンダイウイルス(rSeV-EGFP)持続感染細胞はSeV特異的に重感染を抑制する。そこで、本研究課題はこのウイルスの干渉現象の解明を目的とする。本年度は、この重感染抑制が細胞のウイルス感染状態に依存することを確認した。rSeV-EGFPを接種した細胞を培養し、接種後経時的にルシフェラーゼ発現組換えセンダイウイルス(rSeV-sNluc)を重感染させた。rSeV-EGFP感染後の培養時間に依存してrSeV-sNlucの重感染の抑制が強くなり、rSeV-EGFP感染後48時間培養した細胞ではrSeV-sNlucの感染が有意に抑制された。rSeV-EGFPの感染状態をウイルス抗原とGFPの産生を検出してFACSで確認したところ、rSeV-EGFP感染細胞集団の性状は培養時間に伴って変化し、48時間ではウイルス抗原、GFP共に陽性となる細胞集団に収束した。これらの結果から、rSeV-EGFPの細胞内増殖が重感染抑制を決定することが確認できた。 次に、rSeV-sNluc存在下で1時間培養したrSeV-EGFP持続感染細胞からsNluc遺伝子の検出を行い、細胞に吸着・侵入したrSeV-sNluc量を評価した。持続感染細胞で検出されたsNluc遺伝子量は、正常細胞に比べて顕著に減少した。また、持続感染細胞と1時間培養した後に回収したrSeV-sNlucの残存感染価は、正常細胞に比べて高く維持された。これらの結果は、rSeV-EGFP持続感染細胞での重感染は細胞への吸着・侵入段階で抑制されることを強く示唆している。 以上の結果より、SeV持続感染細胞におけるウイルスの干渉は、あらかじめ感染したウイルスの細胞内増殖に依存し、重感染するウイルスを感染初期の段階で抑制することを強く示唆した。この成果は重感染抑制機構の解析を進めるための重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究遂行に用いた実験材料等は課題開始前にすでに準備が完了しており、研究を支障なく開始できた。また、本年度の実験計画では、技術的に困難な実験内容を含まなかった。以上のことから、本年度の研究は、概ね計画に沿って研究を進行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果は、SeV持続感染細胞の重感染は感染初期に抑制されることを示唆した。この結果から、持続感染細胞における細胞表面ウイルス蛋白質であるHN、F蛋白質が重感染抑制に関与することが予想される。したがって、今後は当初の研究計画に従い、SeVのエンベロープ蛋白質であるHN、F蛋白質の関与に焦点を絞り研究を推進する。すなわち、HN、F蛋白質の単独発現細胞を作製し、それら発現細胞のSeV感染性を検討する実験を中心に展開する。また、感染初期に重感染が抑制されることから、ウイルスの干渉を説明する従来の仮説である「レセプター破壊」の関与についてSeVのレセプター分子と考えられているシアル酸の細胞表面動態を解析する実験を追加する予定である。
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Causes of Carryover |
消耗品等物品の消費税による1円単位の端数などが蓄積したことが主な理由である。全体的に見れば、計画に沿って研究費を使用できている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は年間の使用予定額に大きく影響を与える額ではないので、当初の計画にしたがって使用する。
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Research Products
(7 results)