2016 Fiscal Year Research-status Report
B細胞を介したガンマヘルペスウイルスによるcell to cell感染メカニズム
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15K08509
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
片野 晴隆 国立感染症研究所, 感染病理部, 室長 (70321867)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞間感染 / エクソソーム / マイクロRNA / EBV / KSHV / ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではヒトガンマヘルペスウイルスであるEpstein-Barr virus (EBV) や Kaposi sarcoma-associated herpesvirus (KSHV, HHV-8) の B 細胞を介した細胞間(cell to cell) 感染の分子メカニズムを解明することを目的とする。エクソソームは細胞から放出される老廃物を含んだ小胞体のことであるが、近年、エクソソームには多くのマイクロRNAが含まれ、細胞から放出されたエクソソームがマイクロRNAの作用により遠隔で生理的な活性を発揮することが示されている。本年度は細胞間感染において、感染細胞から放出されるエクソソームの感染における役割を明らかにする目的で、次世代シークエンサーを用いてEBV, KSHV感染細胞のマイクロRNAの全プロファイルを明らかにした。その結果、KSHV感染細胞ではエクソソームに含まれるマイクロRNAの半分以上がウイルス由来のマイクロRNAであること、疾患、組織型ごとに特異的な発現プロファイルがあること、KSHVのマイクロRNAには特殊な塩基配列(モチーフ)があり、エクソソームに優先的に取り込まれ、細胞外に排出されていること、などを示した。これらの結果から、ウイルスマイクロRNAは宿主免疫を逃れ、異常なほど多量に産生され、疾患形成に重要な働きをしている可能性があること、一方で異常産生されたマイクロRNAが細胞外(エクソソーム)へ排除される仕組みも持っていることが示唆される。さらに、KSHV, EBV感染細胞の由来細胞と考えられている形質芽細胞について世界ではじめてその細胞株の樹立に成功し、細胞株の詳細な解析を行った。この細胞はKSHV, EBVの共感染実験には有用なツールになることが期待される
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エクソソームと細胞間感染に関しては次世代シークエンサーを用いてEBV, KSHV感染細胞のマイクロRNAの全プロファイルを明らかにしたことで、高発現マイクロRNAの同定やウイルスマイクロRNAがエクソソームに移行するための特異的モチーフの発見など、極めて重要な知見が得られた。これらの発見は細胞間感染のメカニズムを考える上で、重要な所見である。EBVとの共感染がKSHV感染に与える影響についてはKSHV, EBV感染細胞の由来細胞である形質芽細胞の細胞株を世界ではじめて樹立に成功し、KSHV, EBVの共感染実験には有用なツールになることが期待される。一方で、細胞間感染に必要な分子の同定については、まだ細胞間感染の責任受容体の同定には至っていない。しかし、あらたなKSHV感染細胞株の樹立や日本のKSHV株の全塩基配列を決定するなど、予定を超える成果も得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
1. エクソソームと細胞間感染:①感染細胞のエクソソームに特異的なマイクロRNAの高発現系を確立し、感染実験を行う。細胞接触状態でエクソソーム中に発現が亢進するタンパク、マイクロRNAについても、同様に、添加実験、あるいは、高発現系を用いた感染実験を行う。②エクソソームのDDSとしての利用を動物実験や、in vitroの実験により検討する。 2.細胞間感染に必要な分子の同定:①Cell-freeで提示されている既知のKSHV受容体に対する抗体、mimicを培養液中に添加し、細胞間感染実験を行う。(連携研究者: 菅野隆行)②感染時の細胞表面、特に、接着面に発現するタンパクを、多くの細胞表面タンパクに対する抗体を用いることで、免疫組織化学により同定し、virological synapse形成の観察と細胞間感染に必要な分子の同定を行う。さらに、受容体遺伝子のノックダウン実験、細胞接触により活性化する細胞内シグナルとそれぞれのシグナルを活性化する抗体、阻害薬などを用い、感染効率の違いを測定する。 3. EBVとの共感染がKSHV感染に与える影響の検討:①共感染条件の検討と抗ウイルス薬やシグナル阻害薬の添加実験から得られた標的分子の検討を行う。②EBV, KSHVの共感染、単独感染細胞を用いた動物実験における造腫瘍性、治療薬の検討。 1-3において、感染の分子標的が定まったところで、臨床サンプル(組織や患者血清)での発現を確認する。
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Causes of Carryover |
EBV陽性plasmablastic lymphomaの細胞株樹立につき、当初、予定したよりも新しい知見、成果が多く得られたため、論文投稿、査読が次年度にずれ込んだため。そのための英文校正費、論文投稿料、掲載費、追加実験などの費用を見込み、来年度使用額とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
EBV陽性plasmablastic lymphomaの細胞株樹立について述べた論文のための英文校正費、論文投稿料、掲載費、追加実験などの費用となる。
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[Journal Article] Establishing and characterizing a new primary effusion lymphoma cell line harboring Kaposi's sarcoma-associated herpesvirus2016
Author(s)
Osawa M, Mine S, Ota S, Kato K, Sekizuka T, Kuroda M, Kataoka M, Fukumoto H, Sato Y, Kanno T, Hasegawa H, Ueda K, Fukayama M, Maeda T, Kanoh S, Kawana A, Fujikura Y, Katano H
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Journal Title
Infect Agent Cancer
Volume: 11
Pages: 37
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant