2017 Fiscal Year Research-status Report
B細胞を介したガンマヘルペスウイルスによるcell to cell感染メカニズム
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15K08509
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
片野 晴隆 国立感染症研究所, 感染病理部, 室長 (70321867)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞間感染 / KSHV / EBV |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトガンマヘルペスウイルスであるEpstein-Barr virus (EBV) や Kaposi sarcoma-associated herpesvirus (KSHV, HHV-8) はヒトB細胞に感染し、潜伏感染する。これらのウイルスは上皮(EBV)や血管内皮(KSHV)にも感染し、それぞれ、癌やカポジ肉腫などの悪性腫瘍を発症するが、B細胞から非リンパ球系の細胞への感染は細胞間(cell to cell) 感染が重要と考えられ、本研究ではこの細胞間感染の分子メカニズムを解明することを目的とする。KSHV, EBV が感染するB細胞はその分化マーカーから形質芽細胞に近似した細胞であることがわかっているが、昨年度にわれわれは世界で初めて形質芽細胞リンパ腫細胞から細胞株を樹立することに成功した。このEBV陽性形質芽細胞株は培地にヒトインターロイキン6(hIL-6)を添加することが細胞増殖に必須である。そこで、レンチウイルスベクターでhIL-6を強制的に発現させたところ、培地にhIL-6を添加しなくても自律的増殖が可能であった。一方、レンチウイルスベクターでKSHVのコードするIL-6 (vIL-6)を発現させる系を作成し、本細胞株に導入したが、細胞の自律的増殖は見られなかった。このことから、KSHVがコードするvIL-6は形質芽細胞株の増殖には十分ではなく、他に、増殖因子が必要であることがわかった。また、昨年度に解析したEBV, KSHV陽性細胞におけるエクソソームに含まれるマイクロRNAの解析を引き続き行い、エクソソームに誘導するためのモチーフがEBVのマイクロRNAにも含まれる点を明らかにした。ウイルスがエクソソームを利用して遠隔細胞にマイクロRNAを送り込むことで、エクソソームに含まれるマイクロRNAは細胞間感染で重要な役割を果たしている可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に世界で初めて樹立に成功したEBV陽性形質芽細胞株の解析が進み、hIL-6依存性増殖のメカニズムやKSHVがコードするvIL-6の増殖への影響などを明らかにすることができた。これは、EBVとの共感染がKSHV感染に与える影響を考えるうえで、重要な所見と考えられる。エクソソームと細胞間感染に関しては、EBV, KSHVのマイクロRNAが特異的モチーフを用いてエクソソームに移行していることを明らかにした。エクソソームに含まれるウイルスマイクロRNAが細胞間感染に関連する可能性を考えると興味深い結果である。一方で、KSHVの細胞間感染に必須の分子、あるいは、細胞間感染における責任受容体の同定には至っていないが、レンチウイルスでウイルス、あるいは、ヒトマイクロRNA、タンパクを発現させる系が確立し、細胞間感染のメカニズムの解明に有用なツールになりうると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. エクソソームと細胞間感染:①レンチウイルスベクターによる感染細胞のエクソソームに特異的なmiRNAの高発現系を確立し、感染実験を行う。細胞接触状態でエクソソーム中に発現が亢進するタンパク、miRNAについても、同様に、添加実験、あるいは、高発現系を用いた感染実験を行う。②今回発見されたエクソソームに特異的に発現させるためのモチーフを利用したエクソソームへのマイクロRNAの移行実験を行い、エクソソームのDDSとしての利用を検討する。 2.細胞間感染に必要な分子の同定:①Cell-freeで提示されている既知のKSHV受容体、感染時の細胞表面、特に、接着面に発現するタンパクに対する抗体、阻害薬などを用い、感染阻害実験を行う。また、virological synapse形成の観察とその形成に必要な分子の同定を行う。さらに、受容体遺伝子のノックダウン実験、細胞接触により活性化する細胞内シグナルとそれぞれのシグナルを活性化する抗体、コンパウンド等を用い、感染効率の違いを測定する。 3. EBVとの共感染がKSHV感染に与える影響の検討:①新たに樹立されたEBV陽性形質芽細胞株へのKSHVの共感染条件の検討を行う。②EBV, KSHVの共感染、単独感染細胞を用いた動物実験における造腫瘍性、治療薬の検討。 1-3において、感染の分子標的が定まったところで、臨床サンプル(組織や患者血清)での発現を確認する。
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Causes of Carryover |
形質芽細胞リンパ腫細胞の解析、及び、エクソソームのマイクロRNAの解析から、予定していたことよりも新しい知見、成果が得られ、これらを確認するための追加実験等が必要であったために、今年度計画していた一部の感染実験が翌年度に持ち越された。翌年度にこれらの感染実験を行い、その費用を使用する。
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Research Products
(2 results)