2018 Fiscal Year Research-status Report
B細胞を介したガンマヘルペスウイルスによるcell to cell感染メカニズム
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15K08509
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
片野 晴隆 国立感染症研究所, 感染病理部, 室長 (70321867)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞間感染 / KSHV / EBV |
Outline of Annual Research Achievements |
Epstein-Barr virus (EBV) や Kaposi sarcoma-associated herpesvirus (カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス、KSHV, HHV-8) はヒトB細胞に潜伏感染するが、ヒト体内では上皮 (EBV) や血管内皮 (KSHV) 細胞にも感染し、癌やカポジ肉腫などの悪性腫瘍を発症する。本研究ではB細胞から上皮系の細胞への細胞間感染 (cell to cell infection) の分子メカニズムを解明することを目的とする。KSHV感染細胞と非感染細胞(接着細胞)の共培養において細胞接触によるシグナルを解析し、KSHV感染リンパ腫細胞株が細胞接触による刺激によりKSHVの前早期タンパクであるreplication and transcription activator (RTA)の発現が誘導されることを示すことができた。また、昨年までにKSHVのコードするウイルスIL-6 (viral IL-6, vIL-6) を発現させるレンチウイルスベクターを構築し、vIL-6のみではヒト IL-6 (hIL-6) 依存性の増殖を示すEBV陽性形質芽細胞株の増殖には十分ではなかったことを示したが、本年はKSHVのvIL-6をヒト細胞において、大量合成することに成功し、このvIL-6を形質芽細胞リンパ腫細胞株に添加したところ、増殖活性を示した。しかし、hIL-6よりも活性は低く、形質芽細胞株の増殖には他に増殖因子が必要であることが示唆された。また、EBV, KSHV陽性細胞におけるエクソソームに含まれるウイルス及び細胞側のマイクロRNAの解析を引き続き行ない、細胞側のマイクロRNAでエクソソーム中に特に多く発現するものを同定し、その機能解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エクソソームの研究ではウイルス感染細胞から放出されるエクソソーム中に含まれるマイクロRNAの中で、ウイルスマイクロRNAとともに細胞側(宿主側)のコードするマイクロRNAに関する知見が得られたことから、これらのマイクロRNAについてレンチウイルスベクターの発現系を構築し、解析を行っているところである。ウイルス感染のみならず、ある一定の条件でエクソソーム中に多く含まれる性質があるものと想定され、この点は当初の計画では予想されなかった知見である。細胞間感染においてははじめに細胞間の接触が起こることとその後のウイルスが標的細胞に感染する2つのステップがあるが、少なくとも最初の接触の過程でウイルスが活性化される可能性を示したことはKSHV感染細胞では初めてであり、評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
1. エクソソームと細胞間感染:感染細胞のエクソソームにとくに濃縮される細胞側、ウイルス側のマイクロRNAの高発現系を確立し、感染実験を行う。細胞接触状態でエクソソーム中に発現が亢進するタンパク、マイクロRNAについても、添加、あるいは、高発現系を用いた感染実験を行う。エクソソームに特異的に発現させるためのモチーフ(エクソモチーフ)を利用したエクソソームへのマイクロRNAの移行実験を行い、エクソソームのDDSとしての利用を検討する。 2.細胞間感染に必要な分子の同定:細胞間接触により誘導されるKSHVの前早期タンパクの発現メカニズムについて、プロモーター解析などを行い確認する。また、virological synapse形成の観察とその形成に必要な分子の同定を行う。 3. EBVとの共感染がKSHV感染に与える影響の検討:vIL-6のEBV陽性形質芽細胞株への増殖機構について、IL-6下流のシグナル伝達経路を中心に解析するとともに、KSHVの共感染条件の検討を行う。
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Causes of Carryover |
エクソソームに含まれるmiRNAがウイルス感染に与える影響をさらに詳細に調べる目的で、レンチウイルスベクターを用いたmiRNAの高発現系を確立したが、ウイルスタンパクや宿主蛋白の発現の変動について再現性の実験を行う必要があり、期間の延長を行った。感染実験の結果が得られ次第、2019年度内の論文投稿、学会発表の予定している。
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Research Products
(3 results)