2016 Fiscal Year Research-status Report
新興出血熱ウイルスの細胞内侵入受容体の探索と抗ウイルス薬への応用
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15K08510
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
谷 英樹 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (20397706)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | SFTSV-GP / Cell-to-cell fusion / アミノ酸変異 / リポーターアッセイ |
Outline of Annual Research Achievements |
出血熱ウイルス感染症は致死率が高く重篤な疾患を引き起こすため、ウイルス感染そのものを阻止することが重要であり、感染初期の吸着・侵入機構を解明することが急務である。本年度は、重症熱性血小板減少症候群ウイルス(SFTSV)の細胞侵入とそれに関与するエンベロープ蛋白質(GP)の性状について検討を行った。 はじめにSFTSVのHB29株(中国株)とYG1株(日本株)を細胞に感染させ、膜融合がどのように生じるか、またそれぞれのGPを細胞に発現させて、同様に実験を行った。その結果、HB29株はYG1株に比べ、膜融合が起こりにくいことが明らかになった。そのため、2株でGPのアミノ酸配列を比較し、膜融合の活性に変化を与えるようなアミノ酸を人為的に置き換えた遺伝子配列のGPの変異体を細胞に発現させ、膜融合の程度をルシフェラーゼを用いたレポーターアッセイで評価した。その結果、HB29株のGPの962番目のアルギニン(R)をセリン(S)に変化させた変異体(R962S)で膜融合が起こりやすくなるという結果を得た。この実験結果を確かめるためにGPの962番目のアミノ酸に注目し、YG1株のアミノ酸(S)をHB29株のアミノ酸(R)に変異させて同様の実験を行ったところ、逆に膜融合を起こしにくくなった。加えてVSVシュードタイプウイルスを用いた感染性の測定ではR962Sの変異体で感染性が高まり、962番目のアミノ酸はウイルスの感染にも関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度途中で所属変更を行ったため、実験のセットアップにも時間がかかり、思うようには進めなかった。しかしながら、SFTSVの膜融合に関して新たな知見が得られ、エンベロープ蛋白質側の起因となるアミノ酸を同定できたことは進展していると考えられる。研究課題に挙げている他のウイルスについても同様に解析を行っており、新たな知見が得られることに期待したい。
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Strategy for Future Research Activity |
SFTSVの細胞侵入機構等に関する解析は引き続き進めていきたい。すでにターゲット分子候補の活性などは確認しているので、更に詳細に解析を進めていく。所属変更のため、ウイルスの取り扱い手続き等遅れている部分もあり、いくつか変更を余儀なくされる可能性もあるが、他のウイルス種に関しても、阻害剤の探索を始め順次解析を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
年度末納品等にかかる支払いが平成29年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。平成28年度分についてはほぼ使用済みである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のとおり。
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Research Products
(4 results)