2015 Fiscal Year Research-status Report
hSCARB2-Tgマウスを用いたEV71神経毒力因子の解析
Project/Area Number |
15K08514
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
藤井 健 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 主任研究員 (10580201)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エンテロウイルス / 神経病原性 / マウスモデル / 温度感受性 |
Outline of Annual Research Achievements |
エンテロウイルス71(EV71)はピコルナウイルス科エンテロウイルス属、A群ヒトエンテロウイルスに分類される、手足口病の原因ウイルスの1つである。EV71感染では神経症状を伴う死亡例が報告されている。しかし、その神経毒力決定機構は不明である。我々はEV71感染受容体であるhSCARB2を発現したマウス(hSCARB2-Tgマウス)を作製した。本研究は一つのウイルス株を基準とし、その株の変異体を作出、ウイルス学性質とhSCARB2-Tgマウスでの毒力を比較することで神経毒力に関与するウイルス因子の同定を目的とする。 EV71分離株の中には温度抵抗性株と温度感受性株が存在している。温度馴化による変異はウイルス増殖能を含め神経毒力に変化を及ぼす可能性が高いと考え、温度馴化変異株を選定し、SCARB2-Tgマウスを用いて親株との神経毒力を比較することで神経毒力に関与するウイルス因子を同定することとした。 まず温度感受性株を選定するため13株の低温(37℃)と高温(39℃)での増殖能を比較したところ6株(Hungary株、NETH株、THAI株、KED005株、1095株、KOR株)が温度感受性であった。次に温度感受性株が高温継代することで温度抵抗性株になることを確認するため温度感受性株である、KED005株、1095株、KOR株を高温(39℃)で3代継代し、37℃と39℃でのウイルス力価を比較したところ3代高温継代株は37℃と39℃でそのウイルス増職能が同等になっていた。従って温度感受性株を高温継代することで変異が生じ、温度抵抗性を獲得したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通り、高温継代により温度抵抗性株を3株選定した。EV71粒子を構成するVP1の145番目のアミノ酸がグリシンである株とグルタミンの株が存在する。本研究遂行中にVP1の145番目がグルタミンの方が毒力強くなることが明らかになった。今回高温継代に使用した1095株、KOR株はVP1の145番目アミノ酸はグリシンであり、より明確な解析を行うためVP1の145番目がグルタミンを有する温度抵抗性株を用いた解析に変更したため当初計画よりも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
Hungary株、NETH株、THAI株はVP1-145がグルタミンである。これらの株を高温継代し温度抵抗性株を得た後、当初の実験計画に沿い、EV71感染モデルマウスでの神経毒力比較を行い、毒力決定因子の同定へと繋げる。
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Causes of Carryover |
他の研究成果からより明確な結果を得るため実験計画変更の必要性が生じ、当初予定していた実験遂行に至らなかったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の成果から計画自体の方向性には問題なく、また実験計画変更の目処はついているため修正は可能である。変更項目について遂行することで当該助成金と翌年度助成金を使用する。
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