2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K08524
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
木村 元子 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (00345018)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | T細胞 / 胸腺内分化 / ヘルパー機能 / TCRシグナル / Thpok / Runx3 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘルパー機能を有するCD4T細胞と、キラー活性を有するCD8T細胞の運命決定は、未熟胸腺細胞が正の選択によって受け取るTCRシグナルの長さに依存することが知られている。一方で、未熟胸腺細胞は正の選択リガンドに対して様々なアフィニティを持つTCRを発現していることから、分化過程にある個々の細胞の受け取るTCRシグナルは様々であることが予想される。平成28年度はこの点に着目し、ヘルパー機能の獲得に必要なTCRシグナルの長さの同定を行った。実際のTCRシグナルの長さは、Rag2-GFP BAC Tgマウスを利用することにより測定した。その結果、本来CD8T細胞へと分化誘導するMHCクラスI依存的なTCRシグナルにおいても、約53時間を超える長さのTCRシグナルを受けとった細胞は、ヘルパー機能を有するCD4T細胞へと分化することが明らかとなった。つまり、ヘルパー機能を有するCD4T細胞と、キラー活性を有するCD8T細胞の運命を決定するTCRシグナルの長さには閾値が存在し、その閾値を境に運命決定がなされることがわかった。この結果は論文としてまとめ一流誌に報告した。 さらに、「強いTCRシグナルがT細胞分化に与える影響」について解析を進めるにあたり、アゴニストセレクションに重要な分子として「CD69」に着目した。CD69分子はT細胞の活性化に伴って発現上昇し、胸腺内分化の過程においても発現上昇することが古くから知られている。またCD69の発現はTCRシグナルの強さに対してアナログ的に上昇することから、アゴニスト刺激においては、より高く発現することが予測された。実際、分化段階にある制御性T細胞や、ナチュラルキラーT細胞は、CD69分子を発現しており、CD69欠損は、これらの細胞の分化に影響を及ぼすというプレリミナリーの実験結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、1)ヘルパー機能の獲得に必要なTCRシグナルの長さの測定を行うことで、ヘルパー機能を有するCD4T細胞とキラー活性を有するCD8T細胞分化の運命決定を決めるTCRシグナルの長さの閾値の同定に成功した。この結果は、論文としてまとめ発表し、一流誌に掲載された。これは予定以上の成果である。また、2)すべての未熟胸腺細胞は、分化過程において、一旦ヘルパー機能を獲得する。そしてその後、CD8T細胞への分化に従って、Runx3d依存的にへルパー機能の消失が起こる。つまり、CD8T細胞への分化の過程においては「機能的な逆転」が起こることが、平成27年度からの研究で明らかとなった。この結果については、現在追加実験を行い、論文としてまとめて発表する準備を進めている。一方で、当初予定していた、3)マイクロアレイで同定した新規遺伝子群についての機能解析は、残念ながら重要因子の同定に至ることはできなかった。しかしながら、新たに「CD69」という、TCRシグナルの強さ依存的に誘導される分子に着目し、CD69分子が、「強いTCRシグナルによるT細胞分化」に重要である知見を見出し、現在そのメカニズム解析を行っている。 以上より、全体としては概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、『強いTCRシグナルがT細胞分化に与える影響』について中心に解析を進めていく。とくに、胸腺内分化の過程において、TCRシグナルの強さに対してアナログ的に上昇する「CD69分子」に着目して解析を進めていく予定である。これまでに、制御性T細胞やナチュラルキラーT細胞でCD69分子の発現がみられること、CD69欠損マウスでは、制御性T細胞の分化や、ナチュラルキラーT細胞の分化に影響が見られることが、プレリミナリーな実験結果として得られている。そこで、CD69分子がアゴニストセレクションにどのように関与するのか、その機構を明らかにする。またCD69分子がTCRシグナルの強さに及ぼす影響について明らかにする。得られた知見は論文としてまとめて発表することを目指す。 さらに、『未成熟胸腺細胞がCD8T細胞へと分化する過程においては「機能的な逆転」が起こる』という知見がこれまでに得られている。今後は追加実験を行い論文としてまとめて発表する。 以上の研究を通して、『獲得免疫の主役であるT細胞が末梢で正しく免疫応答を発揮するために、胸腺内でどのような機序で分化し、機能を獲得するのか』その分子メカニズムを明らかにする。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Timing and duration of MHC I positive selection signals are adjusted in the thymus to prevent lineage errors.2016
Author(s)
Kimura, M.Y., Thomas, J., Tai, X., Guinter, T.I., Shinzawa, M., Etzenperger, R., Li, Z., Love, P., Nakayama, T., and Singer, A.
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Journal Title
Nat. Immunol.
Volume: 17
Pages: 1415-1423
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Myosin light chain 9 and 12 are functional ligands for CD69 that regulate airway inflammation.2016
Author(s)
Hayashizaki, K., Kimura, M.Y., Tokoyoda, K., Hosokawa, H., Shinoda, K., Hirahara, K., Ichikawa, T., Onodera, A., Hanazawa, A., Iwamura, C., Kakuta, J., Muramoto, K., Motohashi, S., Tumes, D. J., Iinuma, T., Yamamoto, H., Ikehara, Y., Okamoto, Y., and Nakayama, T.
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Journal Title
Sci. Immunol.
Volume: 1
Pages: eaaf9154(1-10)
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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