2016 Fiscal Year Research-status Report
非定型T細胞および自然リンパ球の分化と機能の転写因子による制御
Project/Area Number |
15K08529
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
瀧 伸介 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (50262027)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自然リンパ球 / 腸管免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
消化管の恒常性維持に必須な働きを有し、その異常が消化管関連疾患を結果することから注目されている消化管非定型リンパ球、すなわちCD8αα型上皮内リンパ球(CD8ααIEL)および自然リンパ球(ILC)の発生・分化における転写因子インターフェロン制御因子2(IRF-2)の働きを検討している。平成27年度までに、IRF-2は胸腺内IEL前駆細胞が機能的に成熟するために必要であることを見いだした。平成28年度には、IRF-2欠損マウスにわずかに残存するTCRαβ+CD8ααIELにおいて、すでにこれらの細胞の分化に必須であることが明らかになっている転写因子T-betの発現が低下していることを見出し、IRF-2がTCRαβ+CD8ααIEL分化を制御する転写因子ネットワークにおいてT-betの上流で機能している可能性が示唆された。また、IRF-2-/-マウスにbcl-2トランスジーンを導入したところ、TCRαβ+CD8ααIELはレスキューされたが、TCRγδ+CD8ααIEL数は戻らなかった。従って、IRF-2の作用は、前者ではアポトーシスに関係しているが、後者では異なるメカニズムで機能していることが明らかになった。並行して進めている腸管内自然リンパ球ILCのIRF-2-/-マウスにおけるILCの分化異常の解析に関して、RORgt遺伝子座にgfp遺伝子を挿入したところ、昨年までに明らかにしたILC3の欠損を細胞表面マーカーだけでなく転写因子発現の観点からも確認でき、ILC1、2、3のすべてのILCサブセットが影響を受けていることを確認した。このことはIRF-2の作用点がこれらの共通前駆細胞すなわちCHILPと呼ばれるステージの細胞内で機能していることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに本研究の2つの課題のうち、IELの分化におけるIRF-2の役割について、その作用点が胸腺内前駆細胞の機能獲得にあり、その少なくとも一部は転写因子T-betの発現上昇、アポトーシスの抑制によって担われていることを明らかにでき、これらを含めた成果を発表するべく、論文の執筆を開始している。また、ILCについても、IRF-2-/-マウス小腸粘膜固有層内において、NK細胞、ILC3、ILC1やILC2のすべてのILCサブセットに異常が見られることを確認し、ILC分化においてもIRF-2の作用点がこれらの骨髄内共通前駆細胞、すなわちCHILPと呼ばれる分化段階にあることが明らかになりつつあるなど、本研究は順調に進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、当初の実験計画に基づいて着実に検討を進める。現在までのところ、当初の予想を覆す結果は得られていないので、実験計画通りに進めることで問題は無いと考えている。具体的には、CHILPで発現することが知られている遺伝子、たとえばPD-1やPLZFなどの発現をフローサイトメトリやRT-PCRで確認し、どういう異常によって分化障害が起きているかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
別予算から旅費を支出したこと、また当初計画で見込んだよりも樹立しようとしていたマウスが予想以上に順調に完成したため、飼育費用が節減できたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は平成29年度請求額と合わせて消耗品費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)