Outline of Annual Research Achievements |
研究の最終年度である本年は, 小児院外心停止の解析, 救急隊反応時間解析, そして時間因子を考慮した「現場蘇生中止基準」の開発を行った. まず, 小児院外心停止6810例を用いて, 標準的蘇生(CPR)と胸骨圧迫単独CPRの成績を比較した. 両群間で1カ月後の神経学的転機良好に差がない例は, 心原性あるいは目撃のある乳児例, 心原性あるいは初期心電図が電気的ショックである1歳以上の小児例, さらに8歳以上の小児例であった. その成果は, 日本臨床救急医学会総会, 日本救急医学会総会と欧州心臓病学会で発表し, Resuscitation誌(2018;122:126-134)に掲載された. また, 救急隊の応答時間について, 53,426例を対象として, バイスタンダーCPRが有効である応答時間の上限を解析した. その結果, 心停止後1カ月後の神経学的転機良好と関連する救急隊応答時間の上限は, 除細動施行例では13分, バイスタンダーCPRのみで除細動非施行例では11分であった. その成果は, 日本臨床救急医学会総会と欧州心臓病学会で発表し, J Am Heart Assoc誌(2018;7:e007568)に掲載された. これらの蘇生解析をもとに決定木分析法を行い, 目撃なし・初期心電図が電気ショック適応なし・救急隊蘇生処置時間15分で自己心拍再開なしの3項目すべてを満たす場合を「現場蘇生中止基準」とした。本基準の心停止後1か月における, 死亡および神経学的転機良好に対する陽性的中立率と特異度は, それぞれ99.1%と98.8%及び99.8%と99.3%であった. 本基準に該当する院外心停止例は, 約9%と推測された. 実際の運用にあたっては, メディカルコントロール体制下に医師の指示により, 救急隊が蘇生を中止することが想定されるが, 前向き臨床研究が今後必要と考えられる.
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