2015 Fiscal Year Research-status Report
治験実施のための教育からの視点に立った研究者教育の検討
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15K08545
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
松本 和彦 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 准教授 (40165882)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥山 隆平 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (80292332)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 研究者教育 / 治験 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、アカデミアにおける臨床研究の不正問題が次々と明らかになり、アカデミアによる臨床研究に対する信頼が大きく揺らいできている。これらの不正問題の原因のひとつとして研究者の臨床研究に対する認識不足が挙げられている。そのため臨床研究を実施する研究者の教育は喫緊の課題となっている。また、治験においても国際共同治験が数多く実施されるようになり、国際的に通用する高いレベルの研究者教育が必要とされる。本邦では治験はGCP、臨床研究は倫理指針という2つの異なる基準により実施されるという特殊な状況があり、臨床研究を実施する研究者に対する教育と治験を実施する研究者の教育を分けて考えることが多い。しかし、臨床研究を実施する研究者は治験も実施することが多く、さらに倫理指針より厳しい基準のGCPで実施される治験の教育を行うことは、日本国内の研究者の臨床研究のレベルアップにつながり、また、特定臨床研究なども今後GCPで実施されることも想定されており、臨床研究を実施する研究者に倫理教育のみならずICH-GCPやGCP教育は必要と考えられる。本研究はICH-GCPやGCPによって行われる治験に対する研究者教育を行うことで、研究者全体のレベルアップを図ることを目的に計画した。 昨年度は当院泌尿器科の医師主導治験(名古屋大学)に対するスタートアップ時の当院で独自に作成したパワーポイントの教材「GCPトレーニング」(治験教育プログラム)や日本製薬工業協会のGCPトレーニングを参考に作成した教材を用いた「研修医向けクルズス」などのGCP対応の研修を実施した。対象となる受講者に合わせる形で現在2つの教育プログラムを作成した。今年度以降はこれらの2つの教育プログラムの改訂を継続していくとともに、院内あるいは院外の研究責任者を対象として、倫理審査委員会や治験審査委員会に申請に必須の教育プログラムの構築を予定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
治験スタートアップ時の当院独自の治験教育教材「GCPトレーニング」、日本製薬工業協会のGCPトレーニング教材を参考に作成した「研修医向けGCP教材」の2つをすでに作成した。これらの教材を用い、院内の研究者に対し治験の教育をすでに実施した。 東京大学・大学病院臨床試験アライアンスで現在構築中の研究者教育教材CREDITSの作成に現在関与している。この教材は国立大学病院臨床研究推進会議で定めた介入試験を実施する研究責任者の学習目標・シラバスに準拠した教材であり、将来的に本邦の多くの研究者が受講できるようにe-learning教材としている。 大学病院臨床試験アライアンス(UHCTアライアンス)の「倫理教育委員会・共同倫理審査委員会設置作業班」のプロジェクトリーダーとして、これまでアライアンス内に倫理教育に関するアンケートをとった。すべての大学において何らかの形で研究実施の必須の教育として倫理教育は実施されていた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度作成した「GCPトレーニング」教材、「研修医向けGCP教材」をブラッシュアップする。 国際基準であるICH-GCPや日本のJ-GCPに対応する教育研修をより国内に広めるために、東京大学・UHCTアライアンスで現在構築中のCREDITSのダイジェスト版の作成を考えており、現在東京大学と意見を交換している。CREDITSの第1章から第3章までは倫理教育であるが、倫理教育に関しては当院を含め多くの病院ではCITI Japanのe-learning教材を取り入れている。CREDITSのダイジェスト版は倫理教育以外の第4章から第12章までの内容となる。この教材は、国立病院臨床研究推進会議の学習目標・シラバス準拠である点、CREDITSよりも時間的に無理なく必要な講習を受けられるという特徴を有する。院内の全ての研究責任者を対象として、倫理審査委員会や治験審査委員会に申請に必須の教育プログラムの構築を予定する。CREDITSの教育システムにのせていただくことで受講管理も円滑に進む。信州大で受講システムの確立し、他の施設にも教材の提供を行う予定である。 さらに、国立大学病院臨床研究推進会議のTG4のサブリーダーとして今年度は「研究責任者教育と倫理審査委員会の関わり」のテーマを担当する。このプロジェクトでは、国立大学病院42大学45施設に対し、倫理委員会の求める必須の研究者教育につき、各施設の原状を把握するためのアンケートを実施する予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度は対象となる受講者のレベルに合わせる形で「GCPトレーニング」教材、「研修医向けGCP教材」の2つの教育プログラム(パワーポイント教材)の作成に取り組んだ。これらの作成に際しては日本製薬工業協会のGCP教材など公開された情報をもとに実施し、資料収集などの研究環境の整備のためのPCの購入以外には、資料作成経費は少なかった。 また、本年度は東京大学・UHCTアライアンスで現在構築中であるCREDITSの要点をまとめた教材(ダイジェスト版)を信州大学が中心になり構築予定であり、これに多額の費用が掛かると予想されることから今年度は支出を最小限にした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は東京大学・UHCTアライアンスで現在構築中であるCREDITSの第4章から第12章の要点をまとめた教材(ダイジェスト版)を信州大学が中心になり構築予定である。CREDITSの第1~3章は倫理教育の部分であるが、倫理教育に関してはすでに多くの施設で教育システムを構築しているので、ダイジェスト版の作成は行わない。第4章から第12章までの倫理教育以外の部分はまだ多くの施設で実施されておらず、CREDITSダイジェスト版の作成は多くの施設で取り入れられる可能性がある。ダイジェスト版はe-learning 教材として構築予定であり、関連業者に委託する業務もあり、多額の経費が必要となる。平成27年度の経費を平成28年度請求額とあわせて業務委託費の一部として使用する。
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