2016 Fiscal Year Research-status Report
未成年者を対象とする全ゲノム解析研究におけるELSI
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15K08550
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大橋 範子 大阪大学, 医学系研究科, 特任研究員(常勤) (50739430)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バイオエシックス / ゲノム・遺伝子解析 / 遺伝情報 / 未成年者 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノム解析技術の飛躍的な向上により、ゲノム・遺伝子解析を伴う臨床研究やコホート研究が普及し、近年では国際的な共同研究の実施も増加しつつある。それとともにゲノム・遺伝子解析におけるELSI(Ethical, Legal and Social Issues)はゲノム・遺伝情報の取り扱い、結果開示、データシェアリングに関するもの等多岐にわたるようになってきたが、この各々の場面で被験者の同意能力の有無あるいは成熟度が関わってくる。本研究は、被験者が未成年者や胎児である場合を対象として、研究が適正に実施されていくための制度構築のあり方を探求している。 具体的なステップとしては、①日本の現況と課題を正しく認識すること、②各国の現況や最新の議論・動向を把握すること、③日本及び各国を比較・検討し、全ゲノム解析研究をめぐる共通の課題を抽出すること、④国を超えて共通の課題・各々の国に固有の課題に対する、各国の具体的対応例を調査すること、⑤研究以外の分野(医療・ビジネス分野)における、ゲノム・遺伝子解析に伴う問題やそれへの対応についての調査であり、最終年度ではそれらを踏まえた提言を予定している。 前年度は上記①・②・⑤を中心に実施した。そして、平成28年度は②、③、⑤に重点を置き研究を進めている。前年度に引き続き、文献調査、国内外のゲノム・遺伝子解析研究実施者へのヒアリング及び学術交流行い、情報の収集・更新に努めた。研究分野以外の、子どもの福祉に関わる問題としては、ビジネス分野のDNA親子鑑定(出生前含む)を中心にした遺伝子解析の問題を、また医療分野では偶発的所見/二次的所見の取り扱いの現状等を調査・検討した。その成果はヨーロッパ人類遺伝学会(2016.5.21~24, バルセロナ)や第28回日本生命倫理学会年次大会(2016.12.3~4, 大阪)での発表及び投稿中の論文に反映されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に引き続いての文献資料による調査は順調に進めている。学術交流等による情報収集については、前年度が当初の予定では英米中心としていたところ、結果として、英国以外の欧州各国やアジア中心になってしまった。そこで、本年度は、海外に関しては主に英米を対象として調査を進めることにし、現在まで十分な成果を得ている(研究・医療の両分野)。特に、偶発的所見/二次的所見の取扱いについては、それに関して研究分野より一歩先んじている医療(クリニカル・シークエンス)分野の検討は英米・日本のそれぞれで充実したものとなった。日本では、臨床と研究の境界のあいまいさがしばしば指摘されているので、この成果は、研究領域のELSIについて今後さらに検討を進める際に、非常に有益であると考えられ、最終年度に向けて大きなステップとなる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度・28年度に実施した文献資料による調査、学術交流・ヒアリング等による情報収集を発展的に引き継ぐ形で行うとともに、国内外の制度上の変更・新設(法的・倫理的規制の策定・改正を含む)を追跡し、最新の情報への更新・知見の集積に努める。 この2年間の成果を活用する形で、ワークショップ・研究会を開催し、関連領域の専門家・研究者と諸課題について議論を深め、連携・協力態勢を築く。そしてこうした態勢を基盤として、2年間の調査・研究を総括し、各国の状況の分析・検討した上で、日本での望ましい制度構築の在り方を探り、提言という形にまとめていく。 また、3年にわたる研究の成果をもとに、国内外での学会発表及び論文執筆・投稿を行い、研究成果を社会に向けて発信、また還元していきたい。
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Causes of Carryover |
各領域の専門家を招聘しての研究会・ワークショップの開催を計画していたが、学会・シンポジウム等々といった交流の機会を利用して意見交換や情報収集を行うことができたこと、所属機関での専門家・研究者へのヒアリングが行えたこと等で、関係者に来阪を要請する機会を減らせたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、海外学会での研究発表、情報収集、また論文執筆のための投稿料等に当初予定より費用が掛かる予定である。また英文校正・英文資料等の費用も追加で発生する。
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Research Products
(1 results)