2016 Fiscal Year Research-status Report
実効性のある「臨床倫理サポート」体制の病院内モデル構築に関する研究
Project/Area Number |
15K08558
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
板井 孝一郎 宮崎大学, 医学部, 教授 (70347053)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 臨床倫理コンサルテーション / 臨床倫理サポート / 倫理コンサルタント / 臨床倫理委員会 / 臨床倫理部 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は当初、自記式アンケート調査を計画としていたが、再検討した結果、半構成的インタビューの方が適正であると再考し、対象施設も宮崎県内に限定せず、関東、関西、九州より6施設を選定し、20名(男性5名、女性15名)、医師6名、看護師7名、ソーシャル・ワーカー2名、理学療法士2名、検査技師1名、事務員1名、倫理学者1名を対象とした。その結果、臨床倫理コンサルテーションに伴う「最も難しいと感じること」としては、“倫理”という言葉の曖昧さに起因する、①「倫理の定義」の問題、次に「現場が求めていること」については、②「依頼者への対応の難しさ」という問題、チーム構成をいかに整え、どのように招集し、対象にすべき範囲をどのように明確にし、さらには人材の育成を行うか等、③「コンサルテーションの組織整備」の問題という3つのコアカテゴリーが浮かび上がった。 その中でも特に「人材育成」については、ASBHが求めている「知識・スキル・態度」に関連しては、「現場スタッフからの声のかけやすさ」という「態度」の問題が、倫理に関する知識やスキルよりも、「個人の振る舞い・態度・雰囲気」というキーワードとして重要視されていることが明らかとなった。現場の医療者にとって倫理チームのメンバーに声をかけやすいということは、倫理チームの存在を知る機会が増えることになるため「組織として実効性のある臨床倫理体制の構築」という課題改善につながることが期待される。 また「他部門との連携」としては安全対策との連携を重要視している結果が得られた。このことはチームへの依頼内容には安全対策を含む問題が混在していることや、ケースによっては倫理的判断のプロセスが不十分だと安全管理上のインシデントとなり得る可能性があることに起因していると考えられ、今後はさらに「安全・安心な医療」こそ「倫理的な医療」であるとの観点が重要となることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では当初、連結不可能匿名化自記式アンケート調査を実施する計画としていたが、研究の性格を再検討した結果、自記式よりも半構成的インタビューにより、主な質問項目として「倫理相談を受けてみようと思った動機は何か」「受けてみて良かったことは何か」「物足りなかったことはなかったか」「倫理相談を行う人材には、どのようなスキルや素養が必要だと思うか」「倫理相談をはじめとする臨床倫理サポートが、医療現場に普及するために重要なことは何だと思うか」「安全管理業務と臨床倫理の取り組みの関係についてどう思うか」、以上を直接質的に解析した方が適正であると考え、変更した。 また、UKへの渡航調査を計画していたが学内業務との折り合いがつかず、自ら渡航することが不可能となったが、反対に国内へ招聘する方向へ転換することとした。そのため計画の変更に伴い、遅れも生じたが研究の実質としては進展していることから「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度として、ASBH報告においても大きな懸案となっている「臨床倫理コンサルタント」育成プログラムのあり方に関して、コンサルタントに期待されているコア・コンピテンシーを、Personal Characterの視点とCore Skills(特に倫理的推論およびコミュニケーション・スキル)と相関させながら、「臨床倫理サポート」の体制構築の病院内モデルを、どのように構築すべきかについての提言を行う。 特に日本国内においては、「病院機能評価統合版評価項目」として求められている「臨床倫理」の組織的な取り組みについては、「安全管理業務」と密接に関連したカテゴリーとして位置づけられており、さらには「特定機能病院承認要件見直し」の中で、診療行為として実施する未承認や適応外の医薬品等を用いた医療や、保険収載があっても当該医療機関で初めて実施する「高難度新規医療技術」についても、安全管理機能強化の観点から 組織として把握・審議する「評価委員会」を設けることが義務付けられる等、今後ますます重要な法律や倫理ガイドラインの存在を認識せずに、「患者に善かれ」と思う“善意”からであったにしても、多職種で構成されたチームの介在しない、個人的な「独断・独善」によって、「思いやり」が「思い込み」に変貌したスタンド・プレーがなされるなら、それは重大インシデントとなる。 こうした事態を「未然に防ぐ」という臨床倫理コンサルテーションにおける「予防倫理(preventive ethics)」としての機能と、質の高い医療実践を担保する「安全管理(safety management)」としてのリスク・マネジメント業務は、極めて相関が深い組織的機能であるという認識のもと、「安全管理業務としての臨床倫理」という視座が、いかにして実効性のある「臨床倫理サポート体制」を病院内に構築していく上で重要であるかを明らかにする。
|
Causes of Carryover |
1171円という少額が残ってしまったのは、消耗品購入の際、単価計算に端数があったためである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品費として使用予定である。
|
Research Products
(5 results)