2015 Fiscal Year Research-status Report
救急・集中治療における一般の脳死判定の現況と患者対応に関する研究
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15K08572
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
荒木 尚 日本医科大学, 医学部, 助教 (30287677)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脳死判定 / 生命倫理 / 臓器提供 / 死 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究は、国内の救急・集中治療医療機関を対象としてアンケート調査を行い、一般の脳死判定実施の現状を把握し、予後不良が強く示唆される患者に対する医学的評価や家族説明がいかになされているかを分析することを目的として計画された。 初年度である平成27年度は、まず適切なアンケート調査項目の検討を行うため、国内外で行われた脳死判定に関する学術論文を可及的に広く収集した。その結果、特に北米における脳死診断の多様性や倫理的問題点が明らかとなった。生命倫理的な課題については、研究代表者が東京大学大学院上廣講座が主催する定期的な研究会を聴講し、多様な課題に対する解決法のについて最新の知見を収集した。 また研究代表者らによる日本小児救急医学会脳死判定セミナーへの参加者の協力を得て過去5年間の実績をまとめ、学会発表及び英文雑誌投稿を行い、専門家からの意見を広く収集した。 さらに我が国における小児脳死診断と未解決の諸問題について知見をまとめ、総説として英文雑誌に投稿し受領された。その内容は国際脳神経外傷学会において招待講演として発表の機会を得たが、同地に於いて当研究を実施するために、非常に有用な意見を世界の識者より受けることが出来た。 アンケート調査項目としては、予定通り設定し病院倫理委員会の承認を得次第、日本医科大学付属4病院に対するpilot studyを開始する予定である。主要項目としては以下の通りである。病院概要・ICU 病床数・年間入室数・医師数、年間救急入院総数、法的脳死判定について(年間死亡者数・年間法的脳死判定数・年間臓器提供数)、一般的脳死について(年間脳死判定数・判定者・判定基準の有無)、終末期の判断について(どの基準を用いているか・学会提言を利用しているか)、脳死についての自由記載など。必要回答数は100 施設(郵送対象約1000 施設)とし、送付から3 か月期間を設定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査に必要なアンケート項目を設定するため、内外の学術論文を総覧し、脳死診断の国際的な実情把握に努めたところ、諸外国においては、脳死診断基準や検査法に大きなばらつきがあることが明らかとなった。 改めて現在日本の脳死診断に必要な調査項目と、将来的に海外の脳死診断との比較を行うために把握すべき調査項目を検討する必要が生じたため、当初の質問項目の見直しを計った。特に小児分野においては、国内での脳死診断の実情に関する情報が少なく、小児医療従事者が回答すべき項目についても付加する必要があると考えられたため、改定を行った。 平成27年度の学会報告は継続的に参加発表を行っており、最新知見の収集にも引き続き努めていく予定である。論文執筆及び投稿は、平成28年度の調査結果を踏まえて最終的に分析結果を報告する予定であるため、統計学的手法を含めて随時検討していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
可能な限り早期に調査項目を暫定し、日本医科大学倫理委員会による許諾を得る。許諾が下り次第、付属4施設に対するpilot studyを約1か月程度で完了、結果を分析する。 平成28年度8月までに調査対象を定め、最終アンケート項目を確定し、調査準備、事務局を設立の上送付を行う。調査期間は約3か月とし回答を得る。 本研究の最重要点である結果分析と考察は、十分な時間をかけて行う予定であるが、調査時点と発表時点で背景に大きな変化が生じないよう、適切な期間を以て解析を終了する。平成28年度内に目的を完結したいと考えている。平成29年度に入り、発表形式に誂えて学会発表や論文を積極的に行い、新たな問題点の抽出や関連学会における発表を通して社会貢献を図っていきたいと思う。
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Causes of Carryover |
現在アンケート調査項目を決定する最終調整段階にあり、項目数の変化によりアンケート用紙印刷にかかる経費と郵送経費が最終的に決定される平成28年度に繰り越し、統括して経費を計上することが適切と考えられたことにより翌年度への繰り越しとしました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前述の通り、調査項目が確定し次第、印刷と郵送にかかる経費を確定する。データの集計と分析については、繰り越し費用の加算が必要となる予定ではなく、本年度の運営予定に従って適宜適正な使用が行われているかどうか確認し、研究を進めたいと考えている。
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