2017 Fiscal Year Annual Research Report
Current Status of General Brain Death Diagnoses in Emergency and Intensive Care in Japan
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15K08572
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
荒木 尚 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (30287677)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 一般的脳死 / 終末期医療 / 無呼吸テスト / 生命倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は研究成果を第30回脳死・脳蘇生学会、第45回日本救急医学会学術集会にて発表を行った。回答施設は年間救急搬送件数10000件以下の2次3次救急病院が多く、死亡退院数は多岐に渉った。一般的脳死判定は専門医資格を保有した医師が複数以上勤務する施設に於いて多くなされ、90%以上の施設において経験されていた。両親や家族に対し「脳死」という語彙が通常使用され、特に外因性救急疾患の場合に多く見られた。一般的脳死の実施は「必要に応じて行う」施設が最多で、「無呼吸テストを除いた施設基準」が用いていた。無呼吸テストを実施しない理由として「予後や治療方針の説明には、脳幹反射消失や平坦脳波で十分」が最多であった。「一般的脳死についてどのように考えるか」については、91施設(24.0%)が「治療方針や予後説明のためならば、脳死診断は厳密でなくても良い」と回答した。「一般的脳死」は延命治療中止の正当性を担保する根拠として位置付けられながら、実際に治療中止が行われる例は少ない。また無呼吸テストを実施しない「全脳機能の不可逆的停止」が「脳死」として家族へ説明される倫理的正当性については今後の検討を要する。臓器提供を前提とした法的脳死において無呼吸テストは必須であり、医学的検証において不適切と判断された実例は一例も存在しない。わが国では、一般的脳死は法的に死を意味せず、脳死診断を以て死亡宣告がなされることはない。しかし、患者の人生の終末を定義する医学的判断を受容するうえで、患者本人や家族の価値観は大きく反映される。医学的な正確さが必ずしも患者・家族にとって最善の利益をもたらすとは限らない場合もある。国民の価値観の多様性に対して豊かに対応できる体制が準備され円滑に機能するために、個々の医療従事者が患者の終末期に及んでいかに対峙していくべきか、脳死診断の問題を通して考察し報告を行った。
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