2016 Fiscal Year Research-status Report
抗がん剤投与による精神機能変化の病態解明と発症予測バイオマーカーの探索
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15K08589
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
北村 佳久 岡山大学, 大学病院, 准教授 (40423339)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅沼 幹人 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00273970)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ドキソルビシン / シクロホスファミド / 化学療法 / 認知機能 / 精神機能 / 脳由来神経栄養因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、乳がんの標準的化学療法であるドキソルビシンおよびシクロホスファミド投与による精神機能へ与える影響についてラットを用いて検討を行った。実験はWistar系雄性ラットにドキソルビシンおよびシクロホスファミドを1週間に1回、4週間投与を行い、最終投与の1週間後に行動薬理学的検討および免疫組織化学的検討を行った。その結果、ドキソルビシンおよびシクロホスファミド投与により認知機能の低下および不安症状の発現を明らかにした。さらに、ドキソルビシンおよびシクロホスファミド投与により神経新生の抑制作用を明らかにした。つまり、化学療法による認知機能低下および不安症状の発現には脳内神経新生の抑制が関与している可能性を明らかにしている。 そこで、本年度は認知機能低下および神経新生抑制の病態機序を明らかにする目的で、これらの機能に重要な役割を担っている脳由来神経栄養因子(BDNF)の血中および中枢における動態について解析をおこなった。その結果、ドキソルビシンおよびシクロホスファミド投与によって血中BDNF含量は有意に低下した。これは血小板減少と相関していた。一方、海馬におけるBDNF含量およびBDNFmRNA量は変化がなかった。さらに、cAMP response binding protein (CREB)の発現量も変化しなかった。つまり、化学療法における神経新生抑制にはBDNF-CREB経路の関与は低いことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も当初の計画通り、認知機能および神経新生に深く関与しているBDNFの動態について明らかにできた。しかしながら、当初の予測とは異なり中枢におけるBDNF量は化学療法において何ら影響されなかった。来年度はその点を踏まえて研究を推進していく。
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Strategy for Future Research Activity |
計画書通りに研究を行っていく。まずは、化学療法において血中BDNF量減少と血小板減少の相関を認めたので、血小板を増加させるトロンボポエチン受容体薬であるロミプロスチム投与の影響について検討を行う。すでに、行動薬理学および神経化学的実験は問題なく実施できており、順調に研究が推移するものと考えている。
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Causes of Carryover |
当初の予定より安価に購入することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究内容の変更はなく、予定通りに研究を推進していく。
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