2016 Fiscal Year Research-status Report
腎機能評価に基づく癌骨転移治療薬による副作用の早期発見と対策法の開発
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15K08591
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
池末 裕明 神戸学院大学, 薬学研究科, 連携准教授 (60748010)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 骨転移治療薬 / ゾレドロン酸 / デノスマブ |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの骨転移は、疼痛や病的骨折による歩行不能を招き、患者の生活の質を著しく低下させる。近年、分子標的薬等により余命が延長し、長期間の骨転移治療を受けるがん患者が増加した。ビスホスホネート製剤であるゾレドロン酸は、破骨細胞の細胞死を誘導し、骨折リスクを30~50%低下させる。ところが、重大な副作用である腎障害の発現率は10~20%と高く、積極的ながん治療をも妨げる。一方、抗RANKL抗体であるデノスマブは、新規骨転移治療薬として期待されるが、重篤な低Ca血症による死亡例も報告されており腎機能低下患者で発現しやすい。 日常診療において、患者の腎機能は血清クレアチニン値をもとに評価するが、これは腎障害が一定以上進行しなければ上昇しないため、腎機能をより鋭敏に評価する方法に基づく使用法の開発が必要である。その候補として、尿中バイオマーカーには無侵襲で腎障害を早期からより正確に検出できる利点がある。 平成27年度は以下の2つの内容を計画した。 ①ゾレドロン酸およびデノスマブにおける副作用発現リスク評価:電子カルテから骨転移に対してゾレドロン酸使用患者の患者背景や検査値、併用薬の影響などを調査し、腎障害の発現状況とリスク因子を調査解析した。また、デノスマブによる低Ca血症の発現状況と関連する因子について同じく検討し、重要な因子の特定と改善策を見出した。 ②ゾレドロン酸による腎障害に特異的な尿中バイオマーカー候補の測定と評価:新規にゾレドロン酸による骨転移治療を始め、同意が得られた患者を対象として尿を回収し、KIM-1、NGAL、L-FABPといった候補タンパク質を定量し、尿中バイオマーカー候補を探索する。平成27年度は、臨床試験の実施計画について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ゾレドロン酸およびデノスマブにおける副作用発現リスク評価については、当初の計画より進展し、平成29年度に計画していた研究内容を一部実施できた。電子カルテから調査した内容をもとにゾレドロン酸による腎障害の発現状況とリスク因子を調査解析した。また、デノスマブによる低Ca血症の発現状況と関連する因子について同じく検討し、治療開始前の患者因子と併用薬が重要な因子であることを特定し、これに基づく予防策を遂行することで改善可能であることを見出した。 一方、ゾレドロン酸による腎障害に特異的な尿中バイオマーカー候補の測定と評価については、臨床試験の実施計画について検討したが、実施には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に進展させた副作用発現リスク評価を着実に進め、副作用回避策について検討する。また、ゾレドロン酸による腎障害に特異的な尿中バイオマーカー候補の測定と評価に関する臨床研究については、研究代表者の所属施設が変更となるため、実施方法を含めて引き続き検討する。 また、当初の計画より先行して実施した、デノスマブによる低Ca血症予防のための処方支援策について検討する際に得た方法論をもとに、以下の副作用の対策法を実行し、その有用性を評価する。すなわち、処方オーダーシステムに腎機能に応じたゾレドロン酸処方支援機能を組込み、併せて疑義照会を強化する。これらの薬学的介入による適正使用および腎障害軽減への影響を評価する。 さらに、一連の研究によって得られた副作用の早期発見の対策法の開発について、得られた結果をとりまとめ、成果の発表を行う。
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Causes of Carryover |
平成28年度は以下の2つの内容を計画した。①ゾレドロン酸およびデノスマブにおける副作用発現リスク評価:電子カルテから骨転移に対してゾレドロン酸使用患者の患者背景や検査値、併用薬の影響などを調査し、腎障害の発現状況とリスク因子を調査解析した。②ソレドロン酸およびデノスマブによる顎骨壊死の発現状況と関連する因子について同じく検討し、重要な因子の特定と改善策を見出した。 平成28年4月に研究機関を異動したことを踏まえ、平成28年度は主に診療録から得られる情報を解析し、新たな知見を得ることを主目的とし研究を行った。その結果、研究費の一部を次年度に使用するよう、研究計画を見直した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に着手した副作用発現リスク評価を着実に進め、副作用回避策について検討する。また、ゾレドロン酸による腎障害に特異的な尿中バイオマーカー候補の測定と評価に関する臨床研究については、研究代表者の所属施設が変更となったため、引き続き実施方法を含め検討する。 また、当初の計画より先行して実施した、デノスマブによる低Ca血症予防のための処方支援策について検討する際に得た方法論をもとに、以下の副作用の対策法を実行し、その有用性を評価する。すなわち、処方オーダーシステムに腎機能に応じたゾレドロン酸処方支援機能を組込み、併せて疑義照会を強化する。これらの薬学的介入による適正使用および腎障害軽減への影響を評価する。以上、次年度に一連の研究計画を完了する見込みである。
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