2015 Fiscal Year Research-status Report
胎盤における母体環境ストレス緩和初動因子の機能発現制御
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15K08595
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
西村 友宏 慶應義塾大学, 薬学部, 講師 (40453518)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
登美 斉俊 慶應義塾大学, 薬学部, 准教授 (30334717)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 胎児発育不全 / 浸透圧 / 胎盤 / トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
胎盤は母体の浸透圧変動による胎児への影響を緩和するために浸透圧調節因子群の発現を変動させる能力を持つ。ラットにおいて循環血での浸透圧変動に応答する胎盤での浸透圧調節因子の発現変動を解析した。中性アミノ酸輸送担体であるSNAT2の発現は上昇し、胎児胎盤系の保護に寄与すると考えられる。このSNAT2の胎盤における発現変動は、胎児発育不全時に観察される現象であり、母体環境が胎盤での遺伝子発現変動と胎児発育に与える影響として重要である。胎盤の培養細胞においても同様に、SNAT2の発現誘導機構を解析した。SNAT2のmRNAの変動は、ゲノムDNAからの転写速度よりもmRNAの分解速度調節に基づくとの我々の知見により、mRNA分解速度調節機構の解明に取り組んでいる。mRNA分解を促進するマイクロRNA(miRNA)との結合に着目し、miRNAが主に結合するとされるmRNAの下流域である3'UTR(Untranslated region)領域の安定性を検討した。SNAT2 mRNAの3'UTRは約2.7kbaseの塩基鎖長があるが、実験的スクリーニングによりこのうち150base程度に領域を絞り込むことに成功した。以上の研究成果の一部は既に学会等により報告している。今後はmiRNAを同定することが目標になる。miRNAの同定は母体の血液の分析により、胎盤機能の分析が可能になる手法の開発に繋がるため、従来には区別が困難であった胎児発育不全の発症機構に基づく診断や予測に応用可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的としているSNAT2の発現変動機構のうち、関与する分子機構が推定が進み、同定に近づいている。ヒトおよびラットのSNAT2の転写領域の活性評価により、胎盤の細胞で転写活性を示す転写調節領域がわかった。またこの転写調節領域は浸透圧への感受性が低いことも示された。一方で、SNAT2 mRNAの分解速度評価により、SNAT2 mRNAは高浸透圧条件下で、比較的特異性をもって分解速度が下がることが示された。また実験動物を用いてSNAT2のin vivoでの発現変動も観察されたので、本研究の基本的概念の重要性も検証できた。本年度の目標としていた計画の大部分は達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通りにSNAT2の発現変動因子の同定を目標に進める。因子同定後はどの程度の精度で血液からの変動因子の検出が可能であるか、また実験動物とヒトとの種差があるかを検証する必要がある。
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Causes of Carryover |
計画が比較的順調に進んだため、必要以上の経費がかかることはなかった。一方、研究推進の都合上、一部の比較的費用がかかる研究計画が結果的に次年度以降になった。国際学会にも参加したが、航空運賃が安くなるように航空便を確保したため、経費が抑制できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画の前半が比較的経費を抑えて遂行できたため、計画の中後半に重点的に費用を配分することができる。また、費用がかかる研究計画に取りかかるため、今年度以降で特に物品費を使用する予定である。
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Research Products
(5 results)