2015 Fiscal Year Research-status Report
損傷ミトコンドリア分解・除去システムを標的とした糖尿病性腎症の早期診断法の開発
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15K08623
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
石井 直仁 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (80212819)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片桐 真人 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (50152674)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 糖尿病性腎症 / 損傷ミトコンドリア / マイトファジー / 酸化ストレス / 3-ニトロチロシン / ニトロ化タンパク質 / プロテオーム解析 / 尿中診断マーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国の新規透析導入の原疾患第1位は、糖尿病性腎症である。現在の腎症診断の指標として「尿中アルブミン測定」と「糸球体濾過量(GFR)」が用いられているが、両指標異常が認められない腎機能低下例が報告されている。これら両方が正常な「腎症発症前の(腎症前期)糖尿病」における腎症の早期診断法の確立が時勢の急務と考える。 腎症発症前の糖尿病ラットの腎皮質において、酸化ストレスマーカーである3-ニトロチロシン生成とミトコンドリアタンパク質ニトロ化により腎皮質ミトコンドリアは既に酸化ストレス障害を受けていることを明らかにしたことから、腎臓の損傷ミトコンドリア蓄積は、細胞障害の原因になる可能性が示された。 本研究の目的は、腎症発症前の糖尿病において、腎臓の防御作用として、損傷ミトコンドリアの分解・除去システムであるマイトファジーにより、ニトロ化タンパク質やそのペプチドが尿中へ排出されることを明らかにし、さらには、尿中で同定されたミトコンドリア由来ニトロ化タンパク質やそのペプチドによる糖尿病性腎症の早期診断マーカーを確立することである。 本年度は、腎症発症前の既に酸化ストレス生成が亢進している糖尿病ラットの腎臓において、1)マイトファジーが誘導される、2)低酸素状態に至っていないにもかかわらず、低酸素応答システムが亢進されることを明らかにできた。 酸化ストレスにより損傷したミトコンドリア分解・除去システムは、主としてLC3-Bnip3経路が関与するマイトファジーが誘導され、ミトコンドリアの品質管理と細胞の恒常性を維持していることが示唆された。また、低酸素状態に至っていないにも関わらず、低酸素応答システムが亢進していた。LC3-Bnip3経路と低酸素応答システムが関連する報告があることから、マイトファジー誘導と低酸素応答システムの関連性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に想定した研究目的の進捗状況は、おおむね順調に進展している。 腎症発症前に既に酸化ストレス生成が亢進している糖尿病ラットの腎臓において、特性となる2点を明らかにできた。 1)マイトファジー誘導を明らかにした。 マイトファジー誘導経路には、①LC3-Bmip3、②Pink1(Parkin)-Ub、③LC3-p62-Ubの3経路が報告されている。LC3-Bnip3経路のみが亢進し、この亢進は腎保護薬(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、酸化ストレス抑制)により抑制された。 2)低酸素状態に至っていないにもかかわらず、低酸素応答システムが亢進していることを明らかにした。 低酸素応答システムの中心的な役割を果たす低酸素誘導因子HIF-1αの発現が亢進し、この亢進は、腎保護薬により抑制された。興味深いことに、組織低酸素検出で、腎皮質は低酸素状態に至っていなかった。 以上の成果を踏まえ、研究計画はおおむね順調に進展していると評価できる。平成28年度は、尿中に排泄されるミトコンドリアタンパク質やそのペプチドを尿中プロテオーム解析で同定する。
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Strategy for Future Research Activity |
近位尿細管細胞には、細胞内のタンパク質やペプチド等の物質を尿中へ排除されるエキソサイトーシス(開口分泌)が存在することから、平成28年において「低酸素応答システムに関連するLC3-Bnip3系によるマイトファジーで分解されたミトコンドリアのタンパク質やそのペプチドは、近位尿細管細胞におけるエキソサイトーシス(開口分泌)介し尿中へ排除(除去)される」仮説を証明する。尿中に排泄されるミトコンドリアタンパク質やそのペプチドを尿中プロテオーム解析で同定(質量分析)する。尿中に排泄されるミトコンドリアタンパク質やそのペプチドが同定されれば、マイトファジーにより酸化ストレスで損傷したミトコンドリアが分解・除去されことが証明でき、診断マーカー確立進展できる。
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Causes of Carryover |
効率よく実験が進行したため抗体等の試薬購入を抑えることができた。また、平成28年度は尿中プロテオーム解析を行うため、使用額が計画を超える可能性があることから、次年度への使用額を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度のプロテオーム解析、質量分析用試薬購入に、次年度使用額を追加する。
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Research Products
(7 results)