2015 Fiscal Year Research-status Report
骨髄微小環境内に残存する治療抵抗性白血病細胞の分子病態と測定システムの開発
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15K08654
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
宮地 勇人 東海大学, 医学部, 教授 (20174196)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 白血病 / 治療抵抗性 / 遺伝子 / 骨髄微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
白血病の治療において、抗がん剤に対する抵抗性または耐性は重要な課題である。本研究では、骨髄微小環境中に残存し再発の原因となる治療抵抗性の白血病細胞における抗がん剤耐性の分子機構を明らかにし、それに基づく耐性の評価システムの開発を目指す。 先行研究にて、FLT3-ITD 発現させた株化培養白血病K562細胞で、DNAマイクロアレイによる遺伝子発現プロファイリングの結果、FLT3-ITDの下流シグナルとしてRUNX3が高発現していることが判明した。FLT3に特異的なPKC412とcrenolanibを用いた抑制実験にてRUNX3発現を調べた。その結果、FLT3-ITD 発現K562細胞に加え、内在性にFLT3-ITDを有する白血病細胞株MOLM-14とMV4:11においてもRUNX3発現が低下していた。RUNX3のara-C耐性への直接的な関与を明らかにするため、内在性・外来性にFLT3-ITDを有する白血病細胞株からRUNX3のノックダウン細胞を作製した。これら細胞においては、ara-C耐性の低下が確認された。 FLT3-ITDを有する2例の急性骨髄性白血病患者細胞において、RUNX3発現が確認され、crenolanib曝露にて発現低下が見られた。 これらの結果は、白血病細胞においてFLT3-ITDはRUNX3発現の亢進を介してara-C耐性あるいは治療後の骨髄残存をもたらす可能性を示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、白血病細胞においてFLT3-ITDはRUNX3発現の亢進を介してara-C耐性あるいは治療後の骨髄残存の機序に関する知見が得られ、RUNX3発現に関係した細胞シグナルと骨髄微小環境との相互関係について今後明らかにすべき方向性が明確化された。一方、FLT3-ITD陽性細胞の継続的な確保において、以下の支障が発生し対応を行った。pMY-puro-FLT3-ITDのウイルスベクター感染株化培養白血病細胞K562にて、細胞培養実験を継続し、抗がん剤感受性試験を行ったところ、ara-C耐性を含め過去と同様の結果が得られた。しかしながら、その後、感受性試験の結果が不安定となり、FLT3-ITD発現の消失が確認された。そこで、FLT3-ITD導入のために、lipofection (FuGENE6)を検討したが、増殖の良い細胞を確保することが困難であった。FLT3-ITDの細胞導入における至適条件を知るため、条件設定の検討を行ったが、十分な細胞が得られなかった。株化培養白血病細胞K562において、新たにエレクトロポレーションにてFLT3-ITDを細胞内導入し、FLT3-ITD発現細胞を作製した。しかしながら、エレクトロポレーションによるFLT3-ITD導入後に細胞生存率が低下し、そのため、その後の細胞培養実験の進行が遅れた。このため、株化培養耐性白血病細胞を用いて、細胞マトリックス・骨髄間質細胞接着との接触にて、抗がん剤感受性の変化を調べる実験への着手が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度の成果に基づき、FLT3-ITD を有する白血病細胞における治療抵抗性の分子機序、および細胞外マトリックス・骨髄間質細胞接着の影響を調べる。 1. ara-C耐性における細胞薬理学的な機序を明らかにするため、その背景となる分子機序として各種の耐性遺伝子の発現を調べる。RUNX3発現の亢進は、SMADsと協調してTGFβシグナル亢進(骨髄間質細胞に発現)を介して、ara-C治療における細胞生存や抗アポトーシス作用を示すとされる。TGFβシグナルの状態の確認および特異的インヒビターやモノクローナル抗体による抑制を調べる。 2. 株化培養耐性白血病細胞を用いて、細胞マトリックス・骨髄間質細胞接着との接触にて、抗がん剤感受性の変化を調べる。抗がん剤としては、急性骨髄性白血病(AML)治療のkey drugであるidarubicin、ara-C、methotrexteを使う。FLT3-ITDを導入した、あるいはFLT3-ITDを有する骨髄性白血病細胞株(K562)にsiFLT3-ITDを導入してノックダウン細胞を作製し、コントロールベクター導入細胞ともに、骨髄微小環境の要素とFLT3-ITD陽性白血病細胞の抗がん剤耐性の関係を知るため、様々な培養条件にて抗がん剤感受性試験を行う。AML細胞における細胞外マトリックス・骨髄間質細胞との相互作用を知るため、細胞外マトリックス構成成分であるファイブロネクチン、コラーゲンなどコートしたマイクロウェルプレート、あるいは骨髄由来間質幹細胞との共培養システムにて抗がん剤感受性を調べる。また、細胞と細胞外環境の相互反応を抑制する機能性モノクローナル抗体や競合ペプチドを用いて、抗がん剤への耐性度変化を調べる。
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Causes of Carryover |
本年度は、株化培養白血病細胞K562において、FLT3-ITDを導入した細胞にて様々な実験を行った。しかしながら、FLT3-ITD導入後に細胞生存率が低下し、増殖の良い細胞を確保することが困難となった。FLT3-ITDの細胞導入における至適条件を知るため、条件設定の検討を行った。その結果、想定していた細胞を用いた実験がやや遅れたため、消耗品の費用が予定額を下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の計画として、本年度の成果に基づき、FLT3-ITD を有する白血病細胞における治療抵抗性の分子機序および細胞外マトリックス・骨髄間質細胞接着の影響を調べる。ウイルスベクターにてFLT3-ITD導入するため、ウイルス粒子フィルターを購入する。 ara-C耐性における細胞薬理学的な機序を明らかにするため、背景となる分子機序として各種の耐性遺伝子の発現や変異を解析する。このための試薬を購入する。TGFβの関与を調べるため、抗TGFβ抗体を購入する。 FLT3-ITDを有する骨髄性白血病細胞株において、様々な培養条件にて抗がん剤感受性試験を行う。細胞マトリックス・骨髄間質細胞接着との接触にて、抗がん剤感受性の変化を調べる。このため、細胞培養に必要な液体培地や消耗品に加え、細胞外マトリックス構成成分であるファイブロネクチン、コラーゲンなどコートしたマイクロウェルプレートを購入する。
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[Journal Article] High event-free survival rate with minimum-dose-anthracycline treatment in childhood acute promyelocytic leukaemia: a nationwide prospective study by the Japanese Paediatric Leukaemia/Lymphoma Study Group.2016
Author(s)
Takahashi H, Watanabe T, Kinoshita A, Yuza Y, Moritake H, Terui K, Iwamoto S, Nakayama H, Shimada A, Kudo K, Taki T, Yabe M, Matsushita H, Yamashita Y, Koike K, Ogawa A, Kosaka Y, Tomizawa D, Taga T, Saito AM, Horibe K, Nakahata T, Miyachi H, Tawa A, Adachi S.
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Journal Title
Br J Haematol.
Volume: 174
Pages: 437-43
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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