2016 Fiscal Year Research-status Report
新規疼痛抑制ペプチドのラット神経系からの単離精製とそのバイオアッセイ法の確立
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15K08676
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
池田 哲也 宮崎大学, 医学部, 准教授 (20264369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安部 博史 北海道医療大学, 心理科学部, 准教授 (20344848)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 慢性疼痛 / 糖尿病性疼痛 / 神経因性疼痛 / APGWamide / アロディニア / 神経ペプチド / HPLC / 疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はAPGWamide様の抗アロディニア活性を有する新規神経ペプチドをラット神経系から単離精製することであり、27年度は、効率よく単離精製するための精製法の検討とバイオアッセイ法の確立を目指した。予備実験としてマウス1000頭分の脳組織をホモジナイズし、遠心分離機で遠沈した後、上清を集め、ロータリーエバポレーターで濃縮した。濃縮液をセファデックスでゲル濾過し分子量で分画した。活性のあった画分をセップパックC18で前処理し、逆相HPLCで分画した。それぞれの精製段階の画分から一部を取り出し、凍結乾燥し、生理食塩水に溶解してバイオアッセイに用いた。バイオアッセイはポリエチレン製のカテーテルを髄腔内に留置した糖尿病性神経因性疼痛モデルラットを用いた。von Frey フィラメントによる足底への機械刺激に対する回避行動の閾値を指標にしてカテーテルからマウス脳抽出液の各精製段階の画分を投与し、抗アロディニア活性を調べた。セファデックスのゲル濾過でペプチドと思われる分子量の画分に複数の強い抗アロディニア活性を認めた。 28年度は、さらにゲル濾過の活性画分に含まれる物質の精製を進めた。それぞれの活性画分のセップパックC18によるエタノール溶出液、またその活性画分を分画したHPLCの画分にも抗アロディニア活性を認めることができた。逆相HPLC、陽イオン交換HPLC数段階を経て、最終精製まで進めることができた。構造決定までは至らなかったが、①糖尿病性神経因性疼痛モデルラットを用いたバイオアッセイ法で各精製過程の抗アロディニア活性を判定することが可能であることが示された。また②この精製法で脳組織から抗アロディに活性を示す神経ペプチドが単離精製できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
27年度は実験計画にしたがって、ラットの神経組織からの抗アロディニア活性を持ったAPGWamide様神経ペプチドの精製法の確立とバイオアッセイ法の確立を目標に ①糖尿病性神経因性疼痛モデルラットの作製 ②ラット脳脊髄から神経ペプチドの抽出(精製法の確立)③抗アロディニア活性の検定 (バイオアッセイ法の確立)を行った。 糖尿病性神経因性疼痛モデルラットの作製は体重約300gのSD系雄ラットを用い、ラット脳抽出物を髄腔内に投与するため、ポリエチレン製のチューブでカテーテルを作り、大槽からクモ膜下腔に挿入し、先端を腰髄の髄腔内に留置した。続いて、ラットの尾静脈からストレプトゾトシン (STZ)を投与することによって膵臓のβ細胞を破壊し、糖尿病モデルを作製した。糖尿病性神経因性疼痛モデルラットは強いアロディニアを示し、von Frey フィラメントによる足底への機械刺激に対する回避行動の閾値を測定することによって、アロディニアの程度を数値化することが可能である。27年度から28年度にかけて、ラットの脳脊髄からのAPGWamide様神経ペプチド抽出の予備実験としてマウス1000頭分の脳組織からAPGWamide様神経ペプチドの単離精製を試みた。セファデックスによるゲル濾過で分画した画分の一部に抗アロディニア活性が見られた。さらにその活性画分に含まれる物質の精製を進めた。それぞれの活性画分を濃縮し、セップパックC18によるエタノール溶出、逆相HPLC、陽イオン交換HPLC数段階を経て、紫外線検出器で単一のピークを示す最終精製物を得ることができた。絶対量があまりにも少なく精製物の構造決定までは至らなかったが、糖尿病性神経因性疼痛モデルラットを用いたバイオアッセイ法で神経組織から抗アロディニア活性を示す神経ペプチドを単離精製するための精製法とバイオアッセイ法を確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はラットの神経系からAPGWamide様抗アロディニア神経ペプチドの単離精製を行う予定であったが、マウス1000匹分の脳組織から単離精製を試みた2年間の経験から、当初の予定の100匹分のラットの脳組織では最終的な構造決定に供する量の精製物を得ることは困難と考えられる。より効率的な精製法を確立することが急務であると思われる。そこで、本年度は、大量に入手することが可能なニワトリの脳組織から抗アロディニア活性を示すAPGWa様神経ペプチドの単離を試みることにした。単離したニワトリの脳組織をマウスの場合と同様の抽出法でホモジナイズし、エバポレーターで濃縮する。抽出物をセファデックスのゲルろ過カラムを用いて分子量で分画し、糖尿病性神経因性疼痛モデルラットでバイオアッセイを行う。抗アロディニア活性を有する画分を集めセップパックC18で前処理し、その溶出物をC18逆相カラム、陽イオン交換カラム、陰イオン交換カラム等数種類のカラムを用いてHPLCを行い、数段階の精製とバイオアッセイを繰り返す。HPLCは紫外線検出器に接続し、紫外線の吸収から目的ペプチドの精製度を確認する。紫外線検出器で単一の紫外吸収ピークが得られた画分 (単一のペプチドしか含まない)と抗アロディニア活性のピークが一致する事を確認し、最終精製物とする。 単離した神経ペプチドの最終精製物を、アミノ酸分析、アミノ酸配列分析、質量分析 (タンデムマス)にかけ、目的ペプチドのアミノ酸配列、C末端のアミド化の有無を確認し、構造を決定する。決定された構造に基づいて、ペプチド合成装置で新規ペプチドを人工的に合成し、ラットから単離した抗アロディニア神経ペプチドの最終精製物と比較し、構造を確定する。その構造を元に、遺伝子を予測し、ラットの遺伝子中に類似構造を探索する。
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Causes of Carryover |
今年度は実験動物(ラット)の使用頭数が予定より少なくなり、ラット購入の予算に余剰金が生じた。この余剰金を余剰繰越金として次年度使用額に算入した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額はバイオアッセイ用のラットの購入費、ニワトリ脳組織の単離費用に割り当てる予定である。ニワトリの脳組織の実験は当初の予定に無く、その費用を次年度使用額でまかなう予定である。
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