2015 Fiscal Year Research-status Report
In vivoイメージングによる疼痛維持機構におけるプロスタノイドの役割の可視化
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15K08684
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
松村 伸治 関西医科大学, 医学部, 講師 (70276393)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 誠二 関西医科大学, 医学部, 教授 (80201325)
西田 和彦 関西医科大学, 医学部, 助教 (80448026)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神経障害性疼痛 / 多光子励起顕微鏡 / バイオイメージング / プロスタグランジンE2 / 脊髄後角ニューロン |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、in utero 遺伝子導入法による脊髄神経回路蛍光可視化可能なマウス作製法を確立し、自発呼吸下の個体のin vivo標本において2光子顕微鏡を用いて複数の脊髄後角ニューロンの細胞内Ca2+イメージングを行い、皮膚感覚刺激に応答するニューロンの3次元刺激-応答地図を作製することに成功した。この新技術を用いることにより、神経障害性疼痛に関わる感覚情報伝達神経回路網を構成するニューロンの形態学的変化とその活動変化を同時に高空間・高時間分解能で可視化が可能となった。遺伝的プローブを用いることで目的ニューロン群におけるイメージングが初めて可能となり、脊髄を摘出すること無く観察を可能とした。プロスタグランジン(PG)E2は疼痛修飾物質として、痛覚のグルタミン酸作動性興奮伝達を促進し、グリシン作動性抑制伝達を減弱して、痛みの中枢性感作に関与していると考えられている。疼痛モデルにおいて疼痛維持の可塑性形成に関与するニューロンの形態学的変化と機能的変化にPGE2がどのように関わるかを解明することを目的としている。神経障害性疼痛の発生機序に大きな役割を担うと考えられる脊髄後角内の神経可塑性を伴う感覚情報伝達系の機能異常に焦点を絞り、興奮性と抑制性介在ニューロンを選択的にイメージングして刺激-応答地図を作成し、同定したニューロンでPGE2の作用機序を受容体サブタイプレベルで解析を行っている。これらは、神経障害性疼痛に対して選択的PGE2受容体サブタイプ拮抗薬の臨床応用につながる糸口につなげる努力をしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
標的ニューロン特異的に蛍光タンパク質を発現するマウスの製 ニューロン特異的なプロモーター遺伝子を用いて細胞特異的に発現する蛍光タンパク(YCnano50)遺伝子を脊髄にin utero遺伝子導入法により導入し、脊髄腰膨大部後角ニューロン特異的にCa2+イメージングが可能となった。 急性スライス標本を用いたニューロンへのPGE2の効果の解析 Fura2-AMなどのCa2+プローブ試薬の複数のニューロンへの選択的な負荷は困難だったので、ニューロン特異的に発現する遺伝的プローブによってPGE2受容体サブタイプの脊髄後角ニューロンにおける役割を検討している。PGE2は疼痛修飾物質として、痛覚のグルタミン酸作動性興奮伝達を促進し、グリシン作動性抑制伝達を減弱して、痛みの中枢性感作に関与していると考えられている。PGE2の4種類の受容体サブタイプはGタンパク質共役型受容体で、いままで神経障害性疼痛において一次求心性感覚神経のEP1、EP3受容体やグリシン作動性抑制ニューロンのEP2受容体による修飾が関与されているとされているが、実際にその過程を経時的に記録することは出来ていなかった。現在、脊髄後角ニューロン特異的、脊髄後角抑制性ニューロン特異的にCa2+プローブを発現したマウスでEP受容体サブタイプの作動薬や拮抗薬を用いてそのものの効果およびグルタミン酸により引き起こされた神経活動に対する修飾作用を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
in vivo標本における動物脊髄のニューロンネットワークの形態的および機能的変化へのEP受容体の役割 従来の実験方法では形態学的変化と機能的変化を同時にとらえることが不可能であったが、in vivo標本に多光子励起顕微鏡を用い脊髄後角ニューロンのCa2+イメージングを行い、脊髄後角ニューロンのEP受容体の役割を解析する。皮膚への機械、熱、化学刺激による選択的なC線維刺激に応答するニューロンでの解析も行う。また、PGE2により修飾を受ける脊髄ニューロンの中枢支配について、in vivo観察に先立ち傍小脳脚核や中脳水道周囲灰白質に蛍光色素を注入し脊髄後角で蛍光陽性ニューロンを同定し、痛覚ニューロン回路での役割を詳細に検討する。vglut2/Rhod2によるオプトジェネティックな非接触の光刺激による選択的なC線維刺激ができるようにマウスを購入し、非接触刺激による神経興奮と脊髄後角ニューロンイメージングができる系を確立することを試みる。 疼痛モデル動物脊髄ニューロンネットワークの可塑性機構の可視化 神経障害性疼痛の特徴の一つは、触覚刺激が痛覚として知覚されることである。この変調を来す可塑性機構を脊髄ニューロンの刺激-応答地図の中で形態学的、機能的変化として可視化する。長時間にわたり、連続的に形態変化を追跡すると共に、それに伴うCa2+動態変化を記録し、形態と機能の連関を解析する。PGE2受容体サブタイプの作動薬、遮断薬を用いてどのような修飾変化が起こるかを観察記録し、EP受容体の役割を詳細に検討する。
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Causes of Carryover |
vglut2/Rhod2によるオプトジェネティックな実験に用いるマウスが高価で、申請額より減額されて交付していただいたので年度内予算内にはわずかに収まりきらず、またそれらマウスは米国からの輸入なので時間がかかるために年度内に執行でずに次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の一部を加えてvglut2/Rhod2によるオプトジェネティックな実験に用いるマウスの購入に充てる。
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