2016 Fiscal Year Research-status Report
呼吸同期型陽子線スポットスキャニング照射法の開発と標準化に関する研究
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15K08705
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
林 直樹 藤田保健衛生大学, 保健学研究科, 准教授 (00549884)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 陽子線治療 / 呼吸性移動 / スポットスキャニング / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、呼吸性移動を伴う疾患に対するスポットスキャニング式陽子線治療において、呼吸位相認識装置を統合させた照射を実現するために、照射方法とその線量分布のシミュレーション、システムの構築および物理検証を行ってその実用性を検証することである。3カ年の研究期間のうち、起訴データ収集のための期間(研究期間A)と実現を踏まえた応用研究期間(研究期間B)とにわけている。 研究2年目は研究期間Aから研究期間Bに移行する年度であり、最終年度に向けてデータを累積する時期である。1年目の基礎研究の際に行った、任意の呼吸性移動を設定できる自作のプログラムソフトを用いて典型的な呼吸性移動を入力し、シミュレーションを行って見積り値を算出した。2016年度の前半にその妥当性の評価のために実測値との比較検証を実施した。その結果、評価基準深より深部においての線量の一致が十分でないことが確認された。見積り結果が妥当でない場合はヘッド構造に挿入する付加構造の発注ができないため、自作プログラムソフトの改良が必要である。したがって、2016年度中盤から後半にかけて基礎データの改良と散乱線補正の計算法を変更した。具体的な方策としては、従前の散乱補正は単純な係数を乗じるだけであったが、Bethe-Brochの方程式を適用して各深さに対応させたことが挙げられる。昨年構築した任意の深さでの線量を推定する機能はそのまま残し、呼吸波形の多様化や深さ方向の線量積算を実行できるようにした。また、体表面の動きを三次元的に観察する装置を用いて、そのデータを数理解析して呼吸性移動を管理するシステムを提案した。このシステムを陽子線治療装置に適用可能かの検討も行った。 研究2年目の研究成果発表としては、米国医学物理学会での発表1編、日本医学物理学会での発表1編、日本放射線技術学会での発表1件である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当研究課題の3年の研究期間のうち、研究期間2年目は基礎研究から臨床へ向けた橋渡し研究を開始する期間と位置づけている。2016年度の前半では、2015年度に実施したシミュレーションベースの研究結果および自作ソフトウェアを用いて算出された値と実測値との比較による基礎実験を行ったところ、特定の条件において実測の値と顕著に乖離することが確認された。これにより、陽子線治療装置ヘッド構造に挿入する付加装置の開発を一旦中止し、自作ソフトウェアの改善が必要となった。2016年度の中盤から後半にかけては自作ソフトウェアのデータベースの見直しと、新たな散乱の算出補正式を導入する大幅な変更を行った。また、このような状況を鑑みて計測システムの開発の研究が進行しない分の遅れを補填するために、研究計画の再編を行った。これにより、2017年度に実施する予定だった体表面の監視による呼吸性移動監視と最適な呼吸監視領域の自動検出システムの開発を前倒しして行った。これによって3カ年研究計画の大幅な遅れを防止することができた。しかしながら、当初の研究計画では既に着手できているはすであったヘッド構造へ挿入する付加装置および独立線量計算システムの開発についての研究項目は進行が遅れたことは否めない。この項目は本研究の根幹となる部分であるため、全体的な研究の進行状況を考えると、予定していた進行ラインよりもやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度の前半のできるだけ早い時期にシミュレーションベースの研究を再度実施し、ヘッド構造部分に挿入する付加装置のデザインと開発に移行できるように努める。また、並行して患者体表面の三次元スキャニングシステムを利用した呼吸監視システムの開発もすすめる。これにより、2017年度の中盤以降にデータの集積を実施し、その後すみやかに研究成果の公表に向けて準備を進める。2018年度以降に多職種研究チームによる臨床へ向けた橋渡し研究の段階に遅滞なく移行できるようにこの研究課題の進行を強固に進める。
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Causes of Carryover |
2016年度の研究概要の部分で触れたように、一部の研究項目の進行が遅れたために全体の研究計画の変更を余儀なくされた。進行が遅れた項目は本研究項目の根幹をなす重要な内容であるため、シミュレーションを再度仕直してから改めて実測の実施とヘッド部分に挿入する付加装置の設計と開発に映ることとした。この経緯により、開発経費に計上していた予算分の執行が2016年に行われなかったため、今回の残余金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
シミュレーション速度を加速するために、2017年度の始めにはコンピュータ計算速度向上のための中央演算装置の発注と、ヘッド構造に挿入する付加装置の設計と開発経費を計上する。また、基礎研究を速やかに完了させ、橋渡し研究へと移行させるために、研究協力者として名古屋陽子線治療センターのスタッフと大学院生を加えて、本研究の一部を実施してもらう。研究成果が上がった場合には、国際雑誌への投稿や国際学会での発表も視野に入れる。現在円安が進んでいるため、国際学会出張は参加費や旅費がいつもより多く見積もられることと、私自身に加えて研究協力者の参加も加味するため当初の予算よりも多くの経費が必要になると考えられる。これらのことにより、現在の残余分の研究費も含めて、研究最終年度となる次年度には全ての研究費を執行する予定である。
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