2015 Fiscal Year Research-status Report
IgA腎症の病態に応じた最適な治療法と解析基盤の構築
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15K08719
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Research Institution | Okinaka Memorial Institute for Medical Research |
Principal Investigator |
星野 純一 公益財団法人冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (70725861)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | IgA腎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、当初の目標に従い、まずIgA腎症に対する大規模・長期間かつ詳細なデータベースの確立に注力した。関東4都道府県の4主要基幹病院の診療責任者および担当者とキックオフミーティングを行い、その後コードブック(入力細則)項目の確定、各施設での実際のデータ入力作業を予定通り開始した。また外部病理評価施設の協力体制を確立し、データ入力の多職種協力体制の構築を行い、実際に一部施設で運用することができた。 登録患者数が当初予定以上に順調に登録できたため、1000例を超えた時点で研究計画を一部前倒しし、研究課題の解析を開始した。その結果、IgA腎症に対する治療法の有効性の検討および時代背景ごとのIgA腎症腎予後に関する論文を発表することができた(Clin Exp Nephrol 2016, in press)。更に腎予後の早期予測因子の検討を行い、その結果の一部は米国腎臓学会(Renal week 2015)にて報告した。 またデータベースの更なる拡張のため、新規施設へのコホート参加の打診を行い、今後も継続的に協議していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 多施設共用データベースの確立:本年度は、当初の目標に従い、まずIgA腎症に対する大規模・長期間かつ詳細なデータベースの確立に注力した。関東4都道府県の4主要基幹病院の診療責任者および担当者とミーティングを重ねてコードブック(入力細則)項目を確定し、各施設にて実際のデータ入力を開始した。また病理学的評価については、横浜市立大学医学部病理部・虎の門病院病理部との協力体制を確立して評価/入力を行っている。多職種によるデータ入力協力体制は一部施設にて構築することができた。データベースの更なる拡張のため、新規施設へのコホート参加の打診を行っており、今後も継続的に協議していく予定である。 2. IgA腎症に対する治療法(特に扁摘パルス療法)の有効性の検討:データベースへの登録症例数が多職種の協力により予想以上に順調に進んだため、1000例以上に達した時点で、IgA腎症に対する治療法と腎予後の関連性の検討を開始した。その結果、扁摘パルス療法は主にCKD G1/G2かつ蛋白尿≧1.0g/gCreの症例で良い適応であるが、その他のカテゴリ―ではステロイドパルス療法を上回る治療効果は明らかではなかった。この結果は傾向スコアを用いて患者背景を考慮した解析でも同様な結果であった(Clin Exp Nephrol 2016, in press)。 3. 時代背景ごとの腎予後の疫学的検討:1980年代、1990年代、2000年代の腎予後が時代と共に改善しつつあることが明らかとなった。新規薬剤や集学的治療の有用性が示唆されると同時に、今後のIgA腎症解析には時代因子も含める必要性が明らかとなった。(Clin Exp Nephrol 2016, in press)
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Strategy for Future Research Activity |
1. データベースの拡充:昨今、hard outcome(死亡または透析導入)に代わるCKD関連の代理アウトカムとしてeGFR30%減が提唱されている。本コホートにおいても代理アウトカムのデータ拡充を行い、今後の解析に備える。また、更なる症例の登録も推進する。 2. 治療法ごとの腎予後予測因子の探索:特に扁摘パルス療法後の追加治療の必要性や追加時期は明らかでない。そこで尿所見寛解(蛋白尿<0.5g/dayかつ尿潜血陰性)に至る時期と腎予後の検討を行う。より早い段階で腎予後予測が可能となれば、追加治療の選択肢の幅が広がると考えられる。患者背景(年齢・腎機能・蛋白尿)に応じた血圧管理目標、特に高齢者に関する検討も行っていく予定である。 3. 国際的腎病理所見(Oxford分類)と日本分類の有用性の検討:病理学的評価の充実を図るとともに、当初の予定通り来年度以降に患者背景に応じた両分類の有用性の比較検討を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
コホート参加施設が当初の予定数を下回ったが、予定を上回る患者数の登録を行うことができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画の微修正のため次年度使用額が生じたが、研究自体に影響はない。
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