2018 Fiscal Year Research-status Report
白内障、緑内障および強度近視のリスク要因と一次予防対策解明のための分析疫学的研究
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15K08749
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
吉田 正雄 杏林大学, 医学部, 准教授 (10296543)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 予防医学 / 公衆衛生学 / 白内障 / 緑内障 / 強度近視 / 疫学研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
白内障、緑内障および強度近視(強度近視に伴う網脈絡膜変性)は、中高齢者における視力低下・失明の重要な原因であり、中高年者のQOLの低下に大きく関わっている疾患である。しかし少なくとも本邦ではまだ、大規模かつ妥当性の高い疫学研究に基づく一次予防方法に関するエビデンスは未確立である。平成30年度は強度近視研究と緑内障研究を中心にデータの収集と解析を進めた。なお、白内障研究についてもデータの解析は並行して進めている。 4歳から84歳の日本人226,451眼を対象に5年間における屈折度数の変化を分析した。その結果、男性では8歳、女性では7歳からの5年間で最も近視の進行が強く、その後の進行は徐々に弱くなり、男女ともに20歳まで続いていた。最も近視の進行が強かった8歳男性と7歳女性における5年後の屈折度数の変化はそれぞれ-2.612±0.053D、-2.978±0.045Dであることが明らかになったので、これらの結果を国際学会にて発表した。 さらに、紫外線暴露による近視の進行への影響を明らかにすることを目的に、紫外線カット付きソフトコンタクトレンズ使用群(UV+SCL)290,775眼、紫外線カットなしソフトコンタクトレンズ使用群(UV-SCL)167,822眼の計458,597眼を5年間追跡した結果、男女ともに、UV-SCL群はUV+SCL群に比較して近視の進行が有意に大きかった。本研究の結果から、紫外線暴露は近視を進行させるリスク要因である可能性が示唆されたため、この結果を国際学会にて発表した。 一方、緑内障研究については、緑内障の最も重要な危険因子の1つである眼圧と喫煙習慣との関係を断面調査に基づき解析した。その結果、喫煙は眼圧の上昇に関与すること可能性が示唆されたので、この結果を学会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)白内障研究 1990(平成2)年にスタートした多目的コホート研究(JPHC Study)のコホート対象地域住民76,190 人(男性35,365 人、女性40,825 人)を対象に白内障罹患に関する5 年間の追跡調査を行った結果、男性1,004 人(2.84%)、女性1,807 人(4.43%)が新たに白内障に罹患していた。この結果を基に、白内障罹患リスクに関連する因子を明らかにするための解析を進めている。 2)緑内障研究 茨城県水戸地域に居住する住民1,113 人を対象に、緑内障の最も重要な危険因子の1つである眼圧に関連する因子を解明するための断面研究および追跡研究を実施している。これらのデータを基に、眼圧値の上昇または下降に関連する生活習慣関連因子を明らかにするための解析を進めている。 3)強度近視研究 平成30年度は強度近視研究のデータ収集と解析が計画通り大きく進捗した。4歳から84歳の日本人226,451眼を対象に5年間における屈折度数の変化を分析した。その結果、男性では8歳、女性では7歳からの5年間で最も近視の進行が強く(男性-2.612±0.053D、女性-2.978±0.045D)、その後は徐々に弱くなるものの男女ともに20歳まで続いていたことが明らかになったので、この結果を国際学会(WOC2018)にて発表した。さらに、紫外線暴露による近視の進行への影響を明らかにすることを目的に、紫外線カット付きソフトコンタクトレンズ使用群290,775眼、紫外線カットなしソフトコンタクトレンズ使用群167,822眼の計458,597眼を5年間追跡した結果、男女ともに、紫外線暴露は近視を進行させるリスク要因である可能性が示唆されたため、この結果を、国際学会(ARVO2018)にて発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)白内障研究(データの収集と解析) 本研究により把握された白内障の症例群とこれ以外の非症例群におけるベースラインおよび追跡調査時のさまざまな生活習慣や栄養、疾病罹患等の情報に基づき、それぞれの質問票調査後に罹患したとするコホート研究を行う。白内障罹患に関連する因子を明らかにし、その結果を学会および論文にて報告する。 2)緑内障研究(データの収集と解析) 緑内障の最も重要な危険因子の1つである眼圧や、さまざまな生活習慣や栄養摂取等に関するデータの収集を実施する。これらの情報に基づき、眼圧値の上昇または下降に関連する因子を解明するための分析を行い、その結果を学会および論文にて報告する。 3)強度近視研究(データの収集と解析) 今後も対象者の追跡とデータ収集を実施する。データの収集と入力作業を進めている途中ではあるが、現在までに蓄積された約46万眼のデータを基に順次解析を進め、その結果を学会および論文にて報告する。平成30年度は新たに約13万眼のデータを得ることができたので、平成31年度もデータの収集作業を継続し、平成31年度末までに50万眼のデータを収集することを目標としている。
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Causes of Carryover |
緑内障、白内障および強度近視について、いずれの研究もベースライン調査からすでに長期の年数を経ており、蓄積された豊富なデータを基に解析と結果の公表が概ね順調に進んでいる。特に強度近視研究については、平成30年度に新たに約13万眼のデータを得ることができ、これまでの断面的および縦断的解析の結果、日本人においては男女ともに中等度近視眼が最も多いこと、遠視眼は女性に多く、強度近視眼は男性に多いこと、男女ともに20歳未満の若年齢層では近視方向に進行する変動量が大きく、男性では8歳、女性では7歳から5年間が最大であること、50歳以上の中高年齢層では遠視方向に進行する変動量が大きいことなどが明らかになった。しかしながら、現在までに近視の進行が最大になる年齢を明らかにすることができているものの、近視の進行が完全に停止する年齢を解明するまでには至らなかった。平成30年度には縦断的解析に基づき、近視の進行が完全に停止する年齢についても明らかにする予定であったが、計画を変更し、平成31年度も新たに追跡データの入力と解析を進めることとしたため、未使用額が生じた。
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