2019 Fiscal Year Research-status Report
白内障、緑内障および強度近視のリスク要因と一次予防対策解明のための分析疫学的研究
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15K08749
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
吉田 正雄 杏林大学, 医学部, 准教授 (10296543)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 予防医学 / 公衆衛生学 / 白内障 / 緑内障 / 強度近視 / 疫学研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
白内障、緑内障および強度近視(強度近視に伴う網脈絡膜変性)は、中高齢者における視力低下・失明の重要な原因であり、中高年者のQOLの低下に大きく関わっている疾患である。しかし少なくとも本邦ではまだ、大規模かつ妥当性の高い疫学研究に基づく一次予防方法に関するエビデンスは未確立である。令和元年度は強度近視研究を中心にデータの収集と解析を進めた。なお、白内障と緑内障研究についてもデータの解析は並行して進めている。 10歳から29歳の日本人290,775眼を対象に5年間における屈折度数の変化を性・年齢・屈折度数階級別に分析した結果、15歳未満では男性よりも女性の方が屈折度数の変動量が大きくなるのに対し、15歳以降では女性よりも男性の方が屈折度数の変動量が大きくなること、加齢とともに屈折度数の変動量が小さくなること、近視の進行は男性では8歳、女性では7歳からの5年間が最大であること、学齢期においては追跡開始時の近視度数が小さいほどその後の屈折度数の変動量が大きくなることが明らかになったので、これらの結果を学会にて発表した(第78回日本公衆衛生学会総会優秀ポスター賞受賞)。 さらに、紫外線暴露による近視の進行への影響を明らかにすることを目的に、12歳から15歳の日本人を対象に、紫外線カット付きソフトコンタクトレンズ使用群(UV+SCL)35,734眼、紫外線カットなしソフトコンタクトレンズ使用群(UV-SCL)21,401眼の計57,135眼を5年間追跡した。5年間における屈折度数の変化を性・屈折度数階級別に分析した結果、男女ともに、またいずれの近視度数においてもUV-SCL群はUV+SCL群に比較して近視の進行が有意に大きかった。本研究の結果から、紫外線暴露は近視を進行させるリスク要因である可能性が示唆されたため、この結果を国際学会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)白内障研究 コホート対象地域住民76,190 人(男性35,365 人、女性40,825 人)を対象に白内障の罹患および手術に関連する因子を解明するための追跡研究を実施している。これらのデータを基に、白内障罹患リスクに関連する因子を明らかにするための解析を進めている。 2)緑内障研究 茨城県水戸地域に居住する住民1,113 人を対象に、緑内障の最も重要な危険因子の1つである眼圧に関連する因子を解明するための断面研究および追跡研究を実施している。これらのデータを基に、眼圧値の上昇または下降に関連する生活習慣関連因子を明らかにするための解析を進めている。 3)強度近視研究 令和元年度は強度近視研究のデータ収集と解析が計画通り大きく進捗し、新たに約7万眼のデータを収集することができた。10歳から29歳の日本人290,775眼を対象に5年間における屈折度数の変化を性・年齢・屈折度数階級別に分析した。その結果、屈折度数の変動量の大きさは男女で年齢による違いがみられること、加齢とともに屈折度数の変動量が小さくなること、近視の進行は男性では8歳、女性では7歳からの5年間が最大であること、学齢期においては追跡開始時の近視度数が小さいほどその後の屈折度数の変動量が大きくなることが明らかになったので、この結果を学会(第78回日本公衆衛生学会総会)にて発表した。さらにこの結果を基に、屈折度数の変動量が特に大きい12歳から15歳を対象に、紫外線暴露による近視の進行への影響を明らかにすることを目的に、紫外線カット付きソフトコンタクトレンズ使用群35,734眼、紫外線カットなしソフトコンタクトレンズ使用群21,401眼の計57,135眼を5年間追跡した結果、男女ともに、紫外線暴露は近視を進行させるリスク要因である可能性が示唆されたため、この結果を、国際学会(ARVO2019)にて発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)白内障研究(データの解析) 本研究により把握された白内障の症例群とこれ以外の非症例群におけるベースラインおよび追跡調査時のさまざまな生活習慣や栄養、疾病罹患等の情報に基づき、それぞれの質問票調査後に罹患したとするコホート研究を行う。白内障罹患に関連する因子を明らかにし、その結果を学会および論文にて報告する。 2)緑内障研究(データの解析) 緑内障の最も重要な危険因子の1つである眼圧や、さまざまな生活習慣や栄養摂取等に関するデータの収集を実施する。これらの情報に基づき、眼圧値の上昇または下降に関連する因子を解明するための分析を行い、その結果を学会および論文にて報告する。 3)強度近視研究(データの収集と解析) 今後も対象者の追跡とデータ収集を実施する。データの収集と入力作業を進めている途中ではあるが、現在までに蓄積された約50万眼のデータを基に順次解析を進め、その結果を学会および論文にて報告する。令和元年度は新たに約7万眼のデータを得ることができたので、令和2年度もデータの収集作業を継続し、近視進行および強度近視に関連する因子を解明するための分析を行い、その結果を学会および論文にて報告する。
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Causes of Carryover |
緑内障、白内障および強度近視について、いずれの研究もベースライン調査からすでに長期の年数を経ており、蓄積された豊富なデータを基に解析と結果の公表が概ね順調に進んでいる。特に強度近視研究については、令和元年度に新たに約7万眼のデータを得ることができ、これまでの断面的および縦断的解析の結果、日本人においては男女ともに中等度近視眼が最も多いこと、遠視眼は女性に多く強度近視眼は男性に多いこと、15歳未満では男性よりも女性の方が屈折度数の変動量が大きくなるのに対し、15歳以降では女性よりも男性の方が屈折度数の変動量が大きくなること、加齢とともに屈折度数の変動量が小さくなること、近視の進行は男性では8歳、女性では7歳からの5年間が最大であること、学齢期においては追跡開始時の近視度数が小さいほどその後の屈折度数の変動量が大きくなること、50歳以上の中高年齢層では遠視方向に進行する変動量が大きいことなどが明らかになった。 さらに令和元年度には、紫外線暴露は近視を進行させるリスク要因である可能性があることが明らかになったが、その科学的根拠を解明するまでには至らなかった。令和元年度には、対象者が使用していたレンズの分光透過率を測定し、透過スペクトルのどの部分が近視進行と関連しているのかを解明する予定であったが、令和2年度も引き続き解析を進めることとしたため未使用額が生じた。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Longevity-associated mitochondrial DNA 5178 C/A polymorphism modifies effect of aging on renal function in male Japanese health checkup examinees: an exploratory cross-sectional study.2019
Author(s)
Ohtsu I, Ishikawa M, Matsunaga N, Karita K, Yoshida M, Ochiai H, Shirasawa T, Yoshimoto T, Minoura A1, Sai S, Kokaze A
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Journal Title
A Journal of Physiological Anthropology
Volume: 38
Pages: 12
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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