2015 Fiscal Year Research-status Report
ステルス型カルバペネム耐性菌の分子疫学的解析及び効果的検出法の確立
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15K08774
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大澤 佳代 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (50324942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重村 克巳 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00457102)
荒川 創一 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70159490)
白川 利朗 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (70335446)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カルバペネム耐性 / 腸内細菌科細菌 / 緑膿菌 / メタロβラクタマーゼ / 基質特異性拡張型βラクタマーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
1)兵庫県および三重県で分離されたカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)26株(Klebsiella pneumoniae 18株、Escherichia coli 8株)について、14種類の抗菌薬に対する感受性試験を行い、メタロβラクタマーゼ(MBL)産生性を確認した。MBL産生株は84.6% (22/26株)であり、イミペネム(IPM)耐性が27.3% (6/22株)、メロペネム(MEPM)耐性が100% (22/22株)であった。PCR およびシークエンスを行い、カルバペネマーゼ関連遺伝子の検出を行った結果、全てIMP-6型を示した。 2)カルバペネム耐性緑膿菌については、兵庫県内の医療機関から分離された55株について、10種類の抗菌薬において感受性試験を行い、MBL産生性を確認した。カルバペネム耐性緑膿菌のうち、MBL産生菌は76.4% (42/55株)を占めていた。MBL産生菌では、MBL非産生菌に比べセフタジジム (CAZ: p<0.01)、セフェピム (CFPM: p<0.01)、シプロフロキサシン(CPFX: p<0.01)、アズトレオナム (ATM: p=0.048)に対する耐性の割合が高かった。一方、コリスチン には100%感受性を示した。PCRの結果は、IMP型85.7% (36/42株)、VIM型9.5% (4/42株)であり、IMP型陽性株についてシークエンス解析を行ったところ、IMP-1型55.6% (20/36株)、IMP-7型44.4% (16/36株)となった。 3)インドネシアの小児下痢症患者から分離されたE. coli 124株を対象とし、15種類の抗菌薬を用いた薬剤感受性試験及びMBLや基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)確認試験を行った。MBL産生株は認められなかったが、ESBL産生株であると確認されたのは20.2% (25/124株)であった。ESBL産生E. coli はβラクタム系抗菌薬に耐性を示すだけでなく、ゲンタマイシン、ナリジクス酸、CFPXが耐性であり、ESBL非産生E. coliと比べて耐性の割合が高かった (p<0.01)。ESBL遺伝子の型別では世界で拡散しているクローンのひとつであるCTX-M-15型は84.0% (21/25株) にみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は研究計画においてグラム陰性菌におけるカルバペネム耐性菌の分布調査を行う予定であったが、概要にも記述したとおり順調に分離株の調査を行っている。腸内細菌科細菌については、日本において現在収集株は約60株近くあるが、薬剤感受性試験やPCR等での確認が継続中である。さらに今年度はインドネシアの株を約200株収集予定である。学会発表として、CREについては第10回日本臨床検査学教育学会学術大会(2015.8 長野県松本市)、カルバペネム耐性緑膿菌については第10回日本臨床検査学教育学会学術大会(2015.8 長野県松本市)と第58回日本感染症学会中日本地方会学術集会(2015.10 奈良県奈良市)、また、インドネシアのESBL産生株については第10回日本臨床検査学教育学会学術大会(2015.8 長野県松本市)にて、概要に記述した内容について発表を行っており、概ね順調に計画を遂行している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、腸内細菌科細菌では、収集株についての薬剤感受性試験、PCRやシークエンスでの型別の他、平成28年度の予定である疫学調査としてrep-PCR法、Multilocus sequence typing (MLST)を行う予定である。カルバペネム耐性緑膿菌やインドネシアの株については、疫学調査としてrep-PCR法、MLSTを行う予定である。また、CREのIMP-6型やカルバペネム耐性緑膿菌のIMP-7型におけるプラスミド解析として、プラスミド全長を比較することと、IMP-6型やIMP-7型近辺の詳細な解析を行っている。これらのMBLの遺伝子をもつ株は同時にESBL遺伝子を持つことから、プラスミド上での関連も確認する予定である。さらに、プラスミドMLSTを行い、プラスミド同士の疫学調査として相同性を比較する予定である。その他、CRE検出の簡易方法について検討し、効果的な診断法の確立を目指すつもりである。
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