2016 Fiscal Year Research-status Report
ブドウ球菌の動く遺伝因子「SCC複合体」の新規遺伝子構造と分子疫学的性状解析
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15K08781
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
漆原 範子 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80396308)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 宣道 札幌医科大学, 医学部, 教授 (80186759)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ブドウ球菌 / メチシリン耐性 / ゲノム / SCC |
Outline of Annual Research Achievements |
Staphylococcus Cassette Chromosome (SCC)はブドウ球菌ゲノムにおける可動性の遺伝子エレメントで,抗生物質・重金属等に対する耐性遺伝子が,種間あるいは種内で水平伝播する際の『運び屋』である。ブドウ球菌属の中でもコアグラーゼ因子陰性種(CoNS)の SCC は多様であり,CoNS から黄色ブドウ球菌へと様々な SCC がもたらされたとの仮説が考えられている。 代表的な SCC として,ブドウ球菌のメチシリン耐性を担う遺伝子 mec をコードしている SCCmec が知られており,ブドウ球菌の分子疫学解析に広く用いられている。他方,アルギニン代謝系酵素をコードする遺伝子群を持つ SCC として ACME が知られており,菌の宿主組織への定着を高め,低 pH 耐性を付与するといった優位な形質を菌体に付与すると考えられている。申請者らは,本邦における主要な遺伝子型であるタイプ II 型の SCCmec を持つ MRSA(MRSA-II)に II’型 ACME を見出し,その後も継続して分布状況や性状を精査している。 本年度は,黄色ブドウ球菌の SCC を中心に解析を行った。2013 年から 2014 年の間に北海道内の医療施設から分離されたMRSA 624 菌体のうち,ACME 陽性の MRSA-II 12 株について SCCmec と ACME 複合体(ACME-SCCmec CI)の遺伝子構造を明らかにした。新たに speG 遺伝子を含む 2 つの ACME-SCCmec CI が見出され,ACME-SCCmec CIの遺伝子構造の再編が進んでいることが示唆された。全 MRSA-II における ACME保有率の年次推移(2008-2014 年)は 0.85%から4.5% へと継続的に上昇していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H27 年度に解析した S. haemolyticus の SCC 解析で,当初考えていた遺伝子構造と異なる結果が得られた。それらの検討に,ルーティンで行っている PCR だけではなく,配列決定,サザンブロッティング等の手法を用いる必要があった。黄色ブドウ球菌の SCCに比べて CoNS の SCC は多様であり,黄色ブドウ球菌で確立されている解析法を適用できない場合が多く,遺伝子構造の解析に予測以上に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS)ブドウ球菌の臨床検体の収集を開始する。収集にあたっては民間臨床検査機関や札幌医科大学付属病院の協力を得る。CoNSの SCC 決定には,既存の配列を基にした PCR とサンガー法だけではなく,次世代型シークエンスの導入しながら,遺伝子構造解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
H27 年度から H28 年度へ 437,587 円を繰り越した。 H 28 年度はほぼ,予定通りに執行したので,初年度に繰り越した未使用分が最終年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
学会参加にかかる費用として,旅費・参加費として用いる。遺伝子解析を外部に委託する必要が出た場合は,こちらに優先して用いる。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Drug resistance and genetic characteristics of clinical isolates of staphylococci in Myanmar: high prevalence of PVL among methicillin-susceptible Staphylococcus aureus belonging to various sequence types.2016
Author(s)
Aung MS, Zi H, New KM, Maw WW, Aung MT, Min WW, Nyein N, Kawaguchiya M, Urushibara N, Sumi A, Kobayashi N
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Journal Title
Microbes and New Infections
Volume: 10
Pages: 58-65
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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