2017 Fiscal Year Research-status Report
パーキンソン病患者には何故癌の発生が少ないのか?-癌発症予防の基礎的研究-
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15K08782
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
福島 哲仁 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (90208942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊谷 智広 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (20528111)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | パーキンソン病 / 癌 / パラコートラジカル感受性 / 乳癌 / 肝臓癌 / ヒト培養細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト肝臓癌細胞、ヒト乳癌細胞について、パラコートによる治療効果を確認するための実験を行った。用いた細胞は、正常肝細胞としてHP-NP2、肝臓癌細胞としてHep G2、正常乳腺細胞としてHMEC、乳癌細胞としてMCF 7。培地は、HP-NP2には、Plating MediumとしてDMEM、Maintenance MediumとしてWilliams E Medium、Hep G2には、2種類の培地を用い、正常肝細胞と同じWilliams E Medium かDMEM+10% horse serum培地、HMECとMCF 7には、同じHuMEC培地を用いた。培養2日後、パラコートの最終濃度が0(Control)、1、2、3、4、5μMになるように培地交換を行った。その後3日ごとに培地交換を行った。細胞生存率を、パラコート添加の翌日(1日目)、2日目、4日目、7日目に測定した。同じ培地を使った肝臓の細胞の実験では、両者の差は明瞭ではなく、4日目、7日目になると両者ともどの濃度でも生存率が低下しなくなった。専用培地を使った実験では、4日目までは、正常肝細胞の生存率が2μM以上で肝臓癌細胞より先に生存率の低下が始まったが、7日目では、肝臓癌細胞が3μM以上で生存率が低下したにもかかわらず、正常肝細胞は5μMになってから低下した。乳腺の細胞の実験では、乳癌細胞は、1日目から7日目まで4μM以上で生存率が低下したが、正常乳腺細胞は、2日目までは、4μM以上で生存率が低下し、4日目では3μM以上で、7日目では2μM以上で生存率が低下した。乳腺においては、乳癌細胞より正常乳腺細胞がパラコートラジカルへの感受性が高いという結果であった。肝臓では、それぞれの専用培地を使った実験で、7日目では、肝臓癌細胞が正常肝細胞よりパラコートラジカルへの感受性が高いという結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度と28年度は、マウス肝細胞癌細胞と正常肝細胞を用いてパラコートにより発生した活性酸素に対する感受性の差を比較し、肝細胞癌細胞が死に、正常肝細胞が生き残る最も治療効果の高い濃度として、培養2日目までは3μM、7日目では2μMであることがわかった。このパラコート濃度を参考に、ヒト細胞を用いて癌細胞の種類によるパラコートラジカルへの感受性の違いを明らかにすることした。当初予定していた動物実験からの変更であるが、種差の問題を先に確認しておく必要があると判断した。ヒト由来の肝、子宮頸部、乳、肺、大腸等、様々なルーツの癌細胞を想定して計画を立てたが、正常細胞と同じ由来の癌細胞の組み合わせが限られており、結局使えたのが肝細胞と乳腺細胞とそれぞれの癌細胞の2組であった。これらの実験はほぼ終了したが、乳腺細胞については、細胞の状態に不安があったため再実験を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトの細胞を用いた実験で、乳腺においては、乳癌細胞より正常乳腺細胞がパラコートラジカルへの感受性が高いという結果であったため、仮説通りの結果にはならなかったが。肝臓では、それぞれの専用培地を使った実験で、7日目では、肝臓癌細胞がパラコート濃度3μM以上で生存率が低下したにもかかわらず、正常肝細胞は5μMになってから低下した。肝臓癌細胞が正常肝細胞よりパラコートラジカルへの感受性が高いという結果であった。ラジカルは、細胞増殖を刺激する効果もあることから、パラコート濃度3μM程度の低濃度で、7日以上の長期間の観察を行うことで、肝臓癌細胞が死に、正常肝細胞が生き残る治療効果が期待できるかもしれない。これらの結果を踏まえ、マウスを用いたin vivoの実験計画をたて、肝臓癌を念頭に当初予定していた動物実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成29年度に予定していた実験はほぼ終了したが、乳腺細胞と乳癌細胞の状態に不安があったため、年度をまたいで追加で再実験を実施した。その費用として残金を使用した。
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Research Products
(1 results)