2015 Fiscal Year Research-status Report
タンザニアの地方保健センターにおける実践適応科学の試み
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15K08808
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
佐藤 美穂 長崎大学, 熱帯医学・グローバルヘルス研究科, 助教 (40607256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 純久 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (90244053)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | タンザニア / 保健計画 / 住民参加 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンザニア連合共和国の全県では毎年、県保健局計画チーム主導のもと「県総合保健計画(CCHP)」が策定されている。CCHPには、各保健センターの年間計画である「保健施設計画」が添付されることになっているが、現状はそうではない。本研究では、南部リンディ州全6県のうち2県に存在する10カ所の政府系保健センターのうち、5施設を介入施設、5施設をコントロール施設とし、各保健センターに設置される、保健センター委員会が保健施設計画を策定することを本研究の介入とする。この介入により、同じ施設において介入前と介入後、また介入施設と非介入施設では、保健医療サービスを受ける人々の満足度やこれらのサービスを提供するヘルスワーカーの動機づけに変化があるという仮説のもと、介入の効果を定量的、定性的手法を用いて検証することが本研究の目的である。研究期間1年目には、介入施設を対象とした研修、ベースライン調査を実施した。 1.介入施設を対象とした研修:各介入保健センターの保健センター委員会が、「保健施設計画」を策定することができるようにするための研修をリンディ州保健局、介入県保健局との協働により実施し、29名(リンディ県12名、キルワ県 17名)が参加した。 2.ベースライン調査:リンディ県、キルワ県の政府系保健センター、全10施設において、当日保健センターに受診に来ていた患者を対象とした患者満足度調査と、各保健センターに勤務するヘルスワーカーを対象とした動機づけ調査を実施した。その結果、2県において、72名のヘルスワーカー、206名の患者からベースラインデータを収集し、現在分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タンザニアの全国の成人識字率が69%に対し、リンディ州とリンディ州南部に位置するムトワラ州の同率は61%であると報告されている。本研究ではリンディ州の農村部に位置する2県10施設を対象とし、うち5施設を介入施設として研修を実施した。保健センター委員会に参画する住民代表を含め、研修参加者は識字者を想定して研修教材を作成した。しかし、最初に研修を実施したリンディ県では、活発な発言はあったものの、研修後の評価の際に、数名の地域住民代表が非識字であることが判明した。そのため、週末を挟んで翌週に実施したキルワ県での研修では、口頭での説明、グループ活動により時間を多く費やす研修内容に切り替え、研修を終了した。結果として、リンディ県、キルワ県の「県総合保健計画(CCHP)」策定プロセスには5つの介入施設全てがそれぞれの「保健施設計画」を県保健局に提出した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間2年目となる本年度は、次会計年度の計画策定が開始する11月前に介入施設保健センター委員会メンバーを対象に、昨年度の「保健施設計画」策定のプロセス、達成度をフォーカス・グループ・ディスカッションを通じて振り返り、次年度の計画策定に役立てる。また、タンザニアにおいては2015年11月5日就任したジョン・マグフリ大統領の新政権の下、緊縮策の導入、中央省庁の再編などのあらゆる改革が進行している。本研究に関連する「県総合保健計画」策定プロセスにも変化が見られるため、2年目の研究活動では、保健センターの「保健施設計画」に関連のある変更点に関しては適宜修正を加えるなど、十分留意しながら研究活動を実施する予定である。
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