2016 Fiscal Year Research-status Report
認知症のBPSD低減に有効な個人固有の役割活動を特定する評価マニュアルの作成
Project/Area Number |
15K08811
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
小林 法一 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (30333652)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 孝 目白大学, 保健医療学部, 教授 (70158202)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 認知症 / 作業療法 / 認知症ケア |
Outline of Annual Research Achievements |
認知症者のBPSDは適切な支援によって軽減できることが知られている.代表的なのが本人にとって大切で意味のある役割活動への参加支援である.活動中の彼らは,実に穏やかで落ち着いた様子を見せる.しかし,そうした活動は個人によって異なるため,その特定が最大の課題となっている.この課題解決に向けて,本研究では,「認知症高齢者の絵カード評価法」と「色カルタ」の2つのtoolを応用したBPSDの低減に有効な個々人固有の活動・役割を特定する評価マニュアルの開発を目指している.これらのtoolは簡便に認知症高齢者の豊富な語りを引き出せる点に特徴があり,対象者にとって大切で意味のある役割活動の特定に役立つ情報をもたらすと予想される. 本年度は,昨年度の文献レビューおよびパイロット研究の結果を踏まえ,二つの実証研究を実施した. 一つは,病院・施設入所中の認知症高齢者のリハとして,役割となる作業を実施した群と実施しなかった群を比較するコホート研究である.趣味活動や家事などの作業を取り入れたリハ支援を実施した群(作業実施群:34事例)と,体操や算数などの機能訓練主体の対照群(非実施群:34事例)を比較した結果,両群の効果指標(HDS-R,DBD)の利得(支援後ー支援前)に有意差が認められ,作業実施群の方が良好であった. もう一つは,回復期リハビリテーション病棟入院中の認知機能低下が認められる患者を対象とした介入研究である.介入群には1回30分程度の「色カルタ」作業を週2回,4週間実施した.その結果,日本語版NPI-NHやAICS(コミュニケーション能力)等の効果指標に有意か改善が認められた. 二つの研究結果は,いずれも作業を用いた介入の有効性を示すものであった.さらに色カルタについては,この作業自体が認知症高齢者にとっての大切で意味のある役割活動に発展する可能性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度中に認知症高齢者の語りの内容分析を終える予定であった.これについては現在,データ収集まで完了しており,若干の遅れである.これに伴い,試行版マニュアルの改定も遅れている.一方で,H28から29年度にかけて実施予定の実証研究は,予想以上に効果量が高いため,サンプルサイズを小さくできる可能性が高い.これによりデータ収集期間を短縮できるものと思われる. 以上より,全体の進捗状況はおおむね順調である.
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Strategy for Future Research Activity |
暫定版マニュアルの開発に向けて,認知症高齢者の語りの内容分析を急ぐ必要があるが,こちらはデータ量が多くH29年度一杯かかると予想される.そこで昨年度の実証研究の成果を反映したマニュアル改訂を先に行い,これを活用した介入を実施する. 最終的に,これら二つの研究成果を踏まえた暫定版マニュアルを完成させる.
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Causes of Carryover |
研究調査に掛かる旅費の支出が予定よりも少額であった.その理由は,調査協力者の都合により,距離的に近場のフィールドから先にデータ収集を開始し,遠方はH29年度以降にずれ込んだためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は研究フィールドが比較的遠方となるため,旅費および人件費が当初予定よりも増える見込みである.これらの費用に充当する.
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Research Products
(8 results)