2016 Fiscal Year Research-status Report
高齢期うつ病の1次・2次予防に向けたBDNFのエピジェネティクス疫学の縦断的研究
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15K08824
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
井原 一成 東邦大学, 医学部, 講師 (10266083)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森信 繁 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (30191042)
吉田 英世 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (00242735) [Withdrawn]
淵上 学 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 助教 (40403571)
大渕 修一 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (50265740)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大うつ病性障害 / BDNF / 疫学 / エピジェネティクス / DNAメチル化 / SCID / DSM-Ⅳ / 小うつ病性障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は地域における高齢期のうつ病予防に向けてエピジェネティックな観点からの病態的特徴の検索と生物学的スクリーニング指標の開発を目指し、脳由来神経栄養因子(BDNF)遺伝子プロモーターのDNAメチル化障害と精神科医が同定したうつ病との関連を疫学的に縦断的および横断的に検討するものである。 うつ病把握のため、本年度は、2008年設定のコホートで予定通り、また、2011年設定のコホートで追加的に、分担研究者の大淵と疫学調査を実施した。 前者の調査参加者は320人で、健康調査会場で、うつ尺度陽性者全員と無作為に選んだサンプルのうちうつ尺度陰性であった者とに後日行う面接調査への参加を依頼し、それぞれから28人と43人の面接調査参加を得た。2011年コホートではうつ尺度陽性者に面接調査参加を依頼し23人の参加を得た(1人からはインフォームドコンセントを得られなかった)。面接調査では、Structured Clinical Interview for DSM-Ⅳを用いた医師が、これまでの調査で把握していないうつ病を、2008年コホートから8人、2011年から7人を把握した。 BDNF遺伝子のメチル化障害は、2008年コホートで2014年に把握済みの大うつ病性障害のうち2012年時調査で未発症だった8人中5人と、2011年コホートで2013年と15年に把握済みの大うつ病のうち2011年から2014年までの調査時に未発症だった15人中13人とについて、広島大学で保存血液の分析を開始した。昨年度までに分析済みの2人(2011年コホート)を加えると、計20人の大うつ病の発症前のメチル障害が分かることになる。また、これらの者の性と発症前の採血年齢をマッチした対照24人を設定し、メチル化分析済みの11人を除いた13人でのメチル化分析を開始した。年度末現在、以上の分析を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究分担者との共働により、当初の予定通り健康調査(疫学調査)を実施し、また追加的な疫学調査も実施することが出来、前者では高齢者の中でも特に年齢の高い集団から医師の診察によりうつ病の者の把握を進めることができた。また、本研究でこれまで蓄積した診断データと保存した血液とを用いてうつ病のエピジェネティクス研究では世界で初めて、他疾患のエピジェネティクス研究でもはほとんど行われていない、疾病発症前のDNAメチル化の分析を軌道に乗せることが出来た。ただしメチル化障害の分析には、一筋縄ではいかない技術的な難しさがあり、メチル化障害測定の標的としているBDNF遺伝子プロモーターのEXON領域のprimer4で測定精度の低い部位が見つかり、PCRの手続きから再度測定を行う必要があり次年度にメチル化分析の再分析を持ち越すことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
広島大学でのメチル化分析が完成次第、論文化を行う予定である。しかし、メチル化分析は技術的に難しいため、一部のサンプルでメチル化障害率が得られない可能性がある。このため、2017年度も疫学調査を実施して、大うつ病性障害の発症把握の上積みをして、再分析の可能性に備えるとともに、症例数のさらなる積み増しにより、把握時に現在エピソード数を増やし、発症前メチル化率の値も得て、発症前から発症後のメチル化率の変化も捉えることができるようにする。
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Causes of Carryover |
本研究開始時の分担研究者のうち1人が逝去し、分担研究費が未使用のまま年度途中で研究代表者に返還されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分として請求した助成金と合わせて健康調査の実施費用に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)