2016 Fiscal Year Research-status Report
入浴関連事故の実態把握および病態,予防に関する研究
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15K08882
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Research Institution | Chiba Institute of Science |
Principal Investigator |
黒木 尚長 千葉科学大学, 危機管理学部, 教授 (30225289)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 入浴環境 / 熱中症 / 高齢者 / 体温変化 / 入浴介護 / 急死 / 事故 |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景】我が国では高齢者で入浴中の急死が多く、年間約19,000人発生していると推計され、現在も増え続けている。入浴中の事故は死に至るものが多いが、その原因は、事故か疾病か依然として不明である。現状では、死因を正確に決定する診断基準がなく、それを探求することが予防にもつながる。 【対象と方法】2013年に大阪市内で発生したすべての浴槽内事故について、①救急搬送患者については大阪市消防局から、②死亡例については大阪府監察医事務所から、③介護保険施設等での事故について大阪市福祉局介護保険課からデータを入手し、疫学調査を行った。 【結果】CPA以外の救急搬送例は33例と少なく、溺水に至らなかった熱中症11名、溺水18名、疾病発症4名であった。一方、浴槽内死亡は423名(男性 236名、女性187名 平均年齢76.8歳)にみられたが、死因はまちまちであった。介護保険の適用のある介護保険施設等では浴槽内事故は皆無で、介護保険の適用のない介護保険施設等では、一人入浴での死亡4名中3名は入浴後30分以上で生存確認。湯温は全て41℃以上であった。 【考察】41℃以上の湯での30分以上の全身浴では体温が3℃上昇し、Ⅲ度熱中症になりうる。介護保険施設等では、このような長湯でない限り、病的な発作はみられない。文献によると、気道確保されたラットの実験では41℃以上の湯の全身浴で全例死亡し、湯温上昇に伴い、死亡までの時間は短縮され、41℃の湯でも死亡時体温が42.2℃になるという。よって、入浴中の急死は40℃以上の体温で意識消失し溺れる可能性があり、42℃を超えると心筋崩壊による高カリウム血症で心室細動が生じ急死すると考えた。このメカニズムで、入浴中急死の法医解剖所見も矛盾なく説明できる。つまるところ、浴槽内事故のほとんどが熱中症で、初めての熱い湯での長風呂が死につながる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
比較的少ないデータからの解析ではあるが、入浴中の急死の原因のほとんどが熱中症であることが明らかにすることができ、その成果は、マスコミなどでも取り上げられるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
データを増やし、より確固たる証拠を見いだした上で、別の方向からの研究も加え、入浴中の急死の原因が熱中症であることを示すことを証明したい。
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Causes of Carryover |
当初予定していた、出張計画が行われなかったため。結果として22万円ほどの残金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度での、研究出張を増やし、より多くのデータを入手するように努める。
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Research Products
(3 results)