アクアポリンを介した五苓散の下痢改善効果に関する研究

2016 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K08901
• Research Institution: University of Toyama
• Principal Investigator: 柴原 直利 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 教授 (10272907)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2018-03-31
• Keywords: 下痢 / 五苓散 / 生薬 / アクアポリン

Outline of Annual Research Achievements

臨床において下痢は比較的遭遇する頻度の高い症状であり，その治療には漢方薬が用いられることも多く，特に五苓散は急性下痢症に対して頻用される漢方薬であり，近年は五苓散の作用機序としてアクアポリン（AQP）の関与が示唆されている。しかし，五苓散が腸管粘膜のAQPに与える影響は明らかではないことから，五苓散の腸管へ与える影響を基礎的に研究し，AQPを介した五苓散の下痢改善効果に関わる基礎的エビデンスを明らかにすることを目的とした。
五苓散の構成生薬である沢瀉・茯苓・白朮・猪苓・桂皮の各20g，計100gに水500mlを加えて30分間煎出し，濾過後に凍結乾燥法によりエキスを作成した。
Wistar系ラット（6週齢）を1週間馴化飼育後，Control群には水を、五苓散投与群は投与用量により低用量群（70mg/kg）・中用量群（140mg/kg）・高用量群（280mg/kg）に分類し，胃ゾンデにより強制投与した。投与後8時間後まで経時的に糞を採取し，糞便は形状をスコア化するとともに赤外線水分計を用いて糞中水分量を算出した。また，薬物投与8時間後にペントバルビタール麻酔下に開腹して小腸及び大腸を採取し，Western blotting法により空腸及び大腸粘膜層におけるAQP-3, -4, -6のタンパク発現量を検討した。
大腸粘膜層においては，AQP-3及びAQP-4タンパク発現は高用量群がcontrol群に比べ有意に増加した。空腸粘膜層においては，すべての五苓散投与群においてAQP-3タンパク発現量が有意に増加し，AQP-4タンパク発現量は高用量群においてのみ，有意な増加が得られた。AQP-6タンパクは大腸及び空腸粘膜層において発現していたが，有意差は認めなかった。
そこで，硫酸マグネシウム誘発下痢モデルラットを用いて腸管粘膜層におけるAQP-3, -4, -6のタンパク発現量を検討している。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

下痢モデルラットの作製は予定通りに作成できている。また，五苓散，及び生薬エキスについても常法の通りに作製しており，その投与についても計画通りである。糞便中水分量は赤外線水分計により正確に継時変化を測定できている。アクアポリン発現量については， Western blotting法により空腸及び大腸粘膜層内アクアポリン発現量を測定している。以上の結果より，達成度は概ね順調に進展していると判断した。

Strategy for Future Research Activity

水及び硫酸マグネシウム投与によるアクアポリン（3・4・6）発現量の相違を明らかとし，このアクアポリン発現に対する五苓散エキスの影響を低用量・中用量・高用量に分けて検討する。さらに，赤外線水分計により測定した糞便中水分量とアクアポリンの関係について検討する。また，生薬エキスについても下痢改善効果，及び腸管粘膜層内アクアポリン発現量を検討し，下痢改善効果のターゲットとなる生薬とその成分を特定する。