2015 Fiscal Year Research-status Report
高齢者悪性胸膜中皮腫に対する治療選択の最適化をめざした基盤構築
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15K08905
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森瀬 昌宏 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (00612756)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 征史 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00378077)
安藤 昌彦 名古屋大学, 医学部附属病院, 准教授 (10322736)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 悪性胸膜中皮腫 / 高齢者 / 化学療法 / 消化器毒性 / アウトカム予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は研究の第一段階として、高齢者悪性胸膜中皮腫の化学療法における重篤な毒性の発現頻度、毒性出現により治療中止に陥る頻度を同定するコホート研究を計画していた。計画に従い、中皮腫症例のコホート研究を倫理審査承認のもと実施し、これまでに中皮腫症例コホート50例の臨床データを集積した。さらに中皮腫治療のkey drugにおける消化器毒性プロファイルを評価する目的で、肺癌症例コホートについても集積し、中皮腫症例コホートと併せて解析を実施した。すなわち高度催吐リスク群に分類されるシスプラチン、中等度催吐リスク群に分類されるカルボプラチン、および併用薬のペメトレキセドについてPatient Reported Outcomeに基づく消化器毒性調査を実施し解析した。研究成果として、悪性胸膜中皮腫の標準治療であるシスプラチン・ペメトレキセド療法は、非小細胞肺癌の標準治療の一つであるシスプラチン・ビノレルビン療法と比較して、悪心、嘔吐、救済治療いずれも認めないTotal control rateが有意に低いことが示された。両治療ともシスプラチンを含む高度催吐リスク群であるが、特に中皮腫治療のkey drugであるペメトレキセドとの併用療法は、特に消化器毒性が問題となる可能性があることが示唆されている。また別研究では、カルボプラチン併用療法における予防的制吐療法に関して、高齢者では、PS不良例で失敗率が有意に高いことが示された。さらに治療選択肢の少ない中皮腫における2次化学療法の有効性、忍容性についても解析している。研究成果としてシスプラチン・ペメトレキセドre-challenge療法について世界肺癌学会、肺癌学会総会で発表を行った。初年度のこれらの基礎となる複数の検討をもとに、バイオマーカーに基づく消化器毒性予測、毒性による治療中止と関連する臨床背景因子の同定を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの進捗状況について、当初計画していた中皮腫症例のtest cohort作成のためのデータ集積は50例まで進捗しており、さらに症例数を増やしていく予定である。消化器毒性に関連する研究に関しては、より大規模な症例数での検討を行うため、当初の計画に追加して、悪性胸膜中皮腫と同様にシスプラチン、カルボプラチンベースの化学療法を用いる肺癌コホートにおけるデータ集積も行った。これらのコホートに関しては、薬剤部と共同でPatient Reported Outcomeに基づく消化器毒性調査を実施している。得られたデータをもとに、本研究の第一段階である高齢者悪性胸膜中皮腫の化学療法における毒性(特に消化器毒性)の出現頻度とその特徴について多面的な解析を完了した。これらの解析に基づき、研究成果の公表としては、国際学会を含む複数の学会で発表を完了しており、現在臨床データによる消化器毒性に関する解析結果については論文発表に向けて作業中である。今後実施する消化器毒性に関連するbiomarkerの探索研究についても、薬剤部と共同して準備を整えており、関連する臨床dataも過不足なく収集する体制が整っている。以上の状況から現在までの研究の進捗状況としてはおおむね順調に推移していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の第2段階として、validationを目的とした観察研究開始準備中である。validation cohortでは、これまでに集積した悪性胸膜中皮腫のtest cohortの解析において、毒性による治療中止と関連するリスク因子についての再現性の検証を行う予定である。また薬剤部と協同して消化器毒性の評価システムの稼働を継続している。これを活用して、今後実施予定である前向き観察研究においては、当初の計画どおり化学療法による消化器毒性に関連するbiomarker(セロトニン受容体経路の関連分子であるMAO,TPH,ADH,ALDH,5-HTtransporter,5-HTreceptorおよびNK1受容体経路の関連分子であるNeprilysin,NK1resptor等の遺伝子多型)を末梢血球中のDNAを抽出して解析する。その上で、これらのbiomarkerに関するdataと消化器毒性の有無、重症度との関連を評価する。最終的には臨床背景因子と消化器毒性に関連するbiomarkerの情報から高齢者悪性胸膜中皮腫の化学療法に関して、毒性による治療中止に陥るリスクを予測するモデルの構築をめざす。
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