2016 Fiscal Year Research-status Report
加齢に伴う動脈硬化形成におけるマクロファージのCYLDの機能解明
Project/Area Number |
15K08914
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鷹見 洋一 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (90621756)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樂木 宏実 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20252679)
中神 啓徳 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (20325369)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | CYLD / マクロファージ / 老化 / 動脈硬化 / 血管平滑筋 / 石灰化 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性炎症は加齢性疾患の根幹を形成し、中でも動脈硬化は予後を規定する最も重要な病態である。従って、血管に内在し、抗炎症作用を有する分子は治療標的分子となり得る。本研究ではNFκB活性を抑制する脱ユビキチン化酵素(DUB)として知られているCYLD(cylindromatosis)の老化による動脈硬化形成における慢性炎症にて中心的な役割を担うマクロファージ(Mf)でのCYLDの病態生理機能を解析する。また、MfでのCYLDの発現が加齢に伴い低下したことからloss-of-functionによる機能解析を行っている。CYLDをノックダウンしたMfではIL-1βをはじめとして各種炎症性サイトカインや脂質取り込みやシャペロン、つまり泡沫化に関わるSR-A、CD36、LOX-1、FABP-4の発現上昇を認め、動脈硬化進展に寄与していることが示唆されたが、特に発現分泌上昇が顕著であったIL-1βに着眼した。IL-1βのprocessingの観点から、インフラマソーム活性化への関与を検討していたが、CYLDのノックダウンによりNLRP-3の軽度の発現上昇は認めたが、有意なcaspace-1の活性化を認めなかった。現在、in vitroにてIL-1βが関わる加齢性動脈硬化の重要な要素である石灰化を中心について検討しており、CYLDをノックダウンしたMfの培養上清を血管平滑筋に添加することによって石灰化への関与を分子レベルから解析中である。 また、NFκB活性を抑制するDUBとして知られ、IL-1βのprocessingにも関わるA20とCYLDの関連性を互いのredundancyに着眼し解析しており、CYLDのloss-of-functionの環境においてA20の発現上昇により補填している可能性も検討している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
マクロファージ特異的ノックアウトマウスを作製するために、CRISPR/CAS9システムを用いて作製していたが、Exon-1を挟む2つのLoxP siteのノックインを試みたところ、LoxPで挟まれた領域であるExon1が全て欠損したマウスが出来てしまい、費用面から作製方法を変えて再度試みることが出来ず中断中である。また、CYLD KOでは雄の生殖能力がなくなり、オスはCYLDヘテロマウスを用いてCYLD KOを得るための交配を行わなければならない制限があることや、明確な報告はないがCYLD KOの出生率が極端に低いこともあり、ex vivoの実験に際して必要なCYLD KOの雄の数が十分に得られないことが遅延している原因となっている。また、CYLD KOの生殖、出生率の問題から当初予定していたApoEとのダブルノックアウトマウスの作製も難航しており、in vivoにおける動脈硬化の解析が始められない状況である。 また、in vitroにおける脂質取り込みの評価やインフラマソームの活性化評価、平滑筋における石灰化評価について既報告に基づき、positive controlの条件検討に予想外に時間がかかっており、予定より遅延している。
|
Strategy for Future Research Activity |
MfでのCYLDのloss-of-functionにより最も顕著な発現、分泌上昇を示したIL-1βを機軸として解析を進めていく。 ①前述の如く、IL-1βのprocessingの観点から、インフラマソーム活性化への関与を検討していたが、CYLDのノックダウンによりNLRP-3の軽度の発現上昇は認めたが、有意なcaspace-1の活性化を認めなかった。現在、IL-1βのユビキチン化へのCYLDの脱ユビキチン化作用及びそのprocessingへの関与を検討中である。 ②CYLDのloss-of-functionにより発現上昇するIL-1βやTNF-αはNFκB活性を抑制するDUBとして知られ、IL-1βのprocessingにも関わるA20の発現を上昇させ、redundancyに関与している可能性がある。CYLDのloss-of-functionによる表現系が不十分な場合、A20の発現上昇の関与を検討する。 ③in vitroにてIL-1βが関わる加齢性動脈硬化の重要な要素である石灰化について検討を続行する。CYLDをノックダウンしたMfの培養上清を血管平滑筋に添加することによって石灰化への関与を分子レベルから解析する。 ④CYLD KO及びCYLD/ApoEのダブルKOの匹数が機能解析に際し、不十分であれば、現存する2年齢の加齢マウスを用いて、ex vivoの系により加齢に伴うMfでのCYLD低下の加齢性動脈硬化(炎症、石灰化、アポトーシス、増殖など)に関わる分子の動向がCYLDのレンチウイルスによる過剰発現によりどの程度rescueされるかを検討し、CYLDの治療標的分子としての可能性を検討する。
|
Causes of Carryover |
CYLD KO及びCYLD/ApoEダブルKOの作製が予定通りに進まず、その飼育及び解析にかかる費用を予定通りに使用しなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き、CYLD KO及びCYLD/ApoEダブルKOの作製を続行し、解析可能となれば次年度に使用する。間に合わない場合には、前述の推進方策に記した実験費用に加算する。
|