2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K08916
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大田 美香 神戸大学, 医学部附属病院, 研究員 (20274706)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高雄 由美子 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60243309)
高岡 裕 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (20332281)
一瀬 晃洋 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (90362780)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 鍼通電治療 / 鍼治療 / 東洋医学 / 加齢性サルコペニア |
Outline of Annual Research Achievements |
有効な治療法が無い加齢性サルコペニアは、加齢に伴う筋肉量の減少と筋力の低下を特徴とし、超高齢社会である我が国の深刻な健康問題である。これまでに我々は、マウスへの鍼通電刺激が骨格筋幹細胞の増殖を誘導し筋萎縮を予防すること、そしてその作用機序を分子レベルで解明した。本研究では、老化促進モデルマウスに鍼通電治療を行い、加齢性サルコペニアの予防効果の解析とその分子メカニズムの解明に取り組み、加齢性サルコペニア予防を可能にする事を目的として研究する。本年度は、鍼通電治療の評価法について研究した。 はじめに、マウス骨格筋のミオスタチン遺伝子発現の抑制効果を指標に鍼通電治療の評価を行った。刺激した骨格筋のミオスタチンの遺伝子発現をリアルタイムPCR法で解析した結果、ミオスタチン遺伝子の発現が低下した。遺伝子発現の低下とタンパク質量の低下は必ずしも相関しないことが知られているため、遺伝子発現とタンパク質量を比較し、その相関を検討した。刺激後の骨格筋よりタンパク質を抽出し、ミオスタチンタンパク質をウェスタンブロッティングで解析した。その結果、ミオスタチンの遺伝子発現とタンパク質量に相関が認められた。 次に、鍼通電治療の評価として、骨格筋の損傷程度を解析した。刺激したマウスより採血し、血清中のクレアチンキナーゼ活性を測定した。鍼治療したマウスに比べて鍼通電治療マウスでは、骨格筋の損傷程度が少ないことが明らかになった。 以上の結果より、次年度以降に鍼通電治療の効果を評価するために、ミオスタチン遺伝子発現の解析と血清中クレアチンキナーゼ測定を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、鍼通電治療の評価法について研究した。 (1) 鍼通電治療の効果を評価するため、骨格筋のミオスタチン遺伝子発現の抑制効果を解析した。まず、刺激したマウス骨格筋よりRNAを抽出し、cDNA合成を行った後、ミオスタチンの遺伝子発現をリアルタイムPCRで解析した。刺激した骨格筋のミオスタチン遺伝子は、無刺激の骨格筋に比べて遺伝子発現が抑制された。遺伝子発現の低下とタンパク質量の低下は必ずしも相関しないことが知られているため、ミオスタチンタンパク質をウェスタンブロッティングで解析した。刺激した骨格筋よりタンパク質を抽出した後、タンパク質の濃度を測定し、ウェスタンブロッティングを行った。その結果、刺激したマウス骨格筋のミオスタチンタンパク質量は、無刺激の骨格筋に比べて、タンパク質量が減少した。ミオスタチンの遺伝子発現とタンパク質量に相関が認められた。 (2)クレアチンキナーゼ活性を指標として、骨格筋の損傷程度を評価した。マウスに刺激した後、採血し、血清中のクレアチンキナーゼ測定を行った。その結果、刺激したマウスのクレアチンキナーゼ活性は、無刺激のマウスに比べて高い傾向であった。一方、鍼治療のマウスに比べて鍼通電治療マウスではクレアチンキナーゼ活性は低く、骨格筋の損傷程度が少ないことが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、老化促進モデルマウスのSAMP8マウスと正常老化を示すSAMR1を用いて、鍼通電治療による骨格筋の萎縮予防の効果を解析する。 (1)マウス飼育とグループ分け:老化促進モデルマウスの特徴は、成熟後の老化速度が速く、ヒトの老齢期に高頻度に観察される老化病態と共通の病態を自然発症し、寿命は約15~17月齢である。長期間の飼育途中に死亡するマウス匹数を考慮して、マウスを準備し、飼育する。SAMP8マウスとSAMR1マウスを鍼通電治療群と無治療群に分ける。 (2)マウスへの鍼通電治療の方法:既報(Physiol Genomics 30, 102-110, 2007)に従い、麻酔下のマウス下腿三頭筋に2本のステンレス鍼(0.16 mm径)を刺入し、針電極低周波治療器で鍼通電刺激を行う。鍼通電治療群には鍼通電刺激を隔日で行い、治療期間を1~2週間とする予定である。その後、麻酔下で全てのマウスの採血と解剖を行い、下腿三頭筋を摘出し、遺伝子発現解析、タンパク質解析等に供する。 (3) 相対筋量、クレアチンキナーゼの測定:マウス解剖時に相対筋量を測定し、血清中のクレアチンキナーゼを測定する。 (4)遺伝子の発現解析とシグナル伝達系タンパク質の解析:リアルタイムPCR法により、骨格筋のミオスタチン遺伝子の発現を解析する。また、タンパク質合成に関与するPI3K/Aktシグナル伝達経路のタンパク質の解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況から、次年度に老化促進モデルマウスのSAMP8マウスと正常老化を示すSAMR1マウスを購入する予定である。そして、SAMP8マウスとSAMR1マウスの飼育と鍼通電治療を行うため、予算を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画を遂行するため、本研究予算で老化促進モデルマウスのSAMP8マウスと正常老化を示すSAMR1マウスを購入する。そして、研究支援者を雇用し、マウス飼育費用、研究用試薬、研究成果の発表・関連研究の情報収集のための旅費や論文投稿費用、別刷り料等で研究費を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)